今ヨーロッパサッカー界で最も話題になっているチームの1つ、ニューカッスル・ユナイテッドを見てみたいと思います。サウジアラビアの政府系ファンドが主体となった共同事業体が買収し、大きな話題となりました。

ニューカッスル・ユナイテッドは長くイングランド代表を支えてきたクラブのレジェンドでもあるアラン・シアラーが在籍していたチームです。近年では日本人ストライカー武藤選手が所属したことで日本市場においても認知度が比較的高いと思います。コロナ前のシーズン売上を見てみると1億7600万ポンド、およそ日本円で255億円になります。70%がTVの放映権分配金になり、スポンサー収入は2800万ポンド(日本円で約40億円)ほどしかなく、2017-18シーズンから中国のスポーツベッティングの会社がメインスポンサーになっています。

ここ数年は水面下で売却の話が進行していたようですが、前オーナーのマイク・アシュリーは日本円にして約200億円前後でチームを購入し、倍以上となる450億円近くで売却したようで、まさにビジネスマンとしての手腕を発揮した形になりましたが、その売り文句にも良い言葉が並んでいたようです。大きな借金はすべてマイクがクラブ購入時に一括で精算しており、その額は150億円ともいわれていました。マイクにしてみれば合計で350億円近く投資し、14年を経て450億円前後で売却することができたというのは1つのビジネスとしては成功していると見ているに違いありませんが、フットボールビジネスの場合は良質な選手をいかに集めるかがポイントです。この部分を怠ったことだけが、このビジネスが大成功とまで至らなかった理由だったのかもしれません。

報道にもあったように、今回買収したのは以前うわさされていたUAEのグループではなく、サウジアラビアの政府系投資ファンドでした。プレミアリーグでも国家を背景とした投資グループによるチームの買収は問題視されていたようですが、最終的には承認されるという形になりました。中東の報道によると、このサウジアラビアのオーナーはカタール資本の放送局でもあるBeIn Sportsとプレミアリーグの放映権に関して揉め事を起こしており、このBeIn Sportsのオーナーが現PSGの会長兼UEFA評議委員を務めるアル・ナセル・ケライフィー氏であることから、ピッチ外でも激しく火花が散っているようで、こちらも目が離せません。

ニューカッスルは8試合を終えて降格圏内に沈んでいます。新オーナーとなってビッグネームを獲得するのかということが注目されますが、まずはすぐにでも結果を出して残留しなければなりません。どう立て直すのか注目です。

今回のニューカッスル・ユナイテッドの買収で明確になりましたが、やはり財力のあるところへの営業がポイントになっていることは明確です。資本主義の中では特徴的な出来事でもあります。これら中東の国々と上手くお付き合いすることができるのか、それともなんだかんだで牛耳られていってしまうのかこの流れにも注視していきたいと思います。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)