ブラジル代表は今回のW杯南米予選で意外にも独走した。6節を終えて6位、16年南米選手権1次リーグ敗退でドゥンガ前監督が辞め、チチ監督が就任したら残り試合は10勝2分けと無敗だ。そんなに有名な監督ではないが、タイトルは取っている。コリンチャンスで12年クラブW杯に出た時には下馬評を覆してチェルシーを破り、優勝した。その時にチームにいたのがMFパウリーニョだ。

 今のブラジルの強さは、リオデジャネイロ五輪優勝組の若い選手をうまく使って、融合させた点だろう。オランダがW杯出場権を逃した敗因は世代交代の失敗といわれるが、ブラジルはうまくいった。チチ監督は16年6月に新監督になり、同8月のリオ五輪期間中はよく視察していたと聞く。次のW杯予選となった9月にはFWガブリエルジェズスやMFレナトアウグストら五輪組を呼び、連勝街道が始まった。ちょうど世代交代が必要な時期で、それが優勝によってスムーズに進んだ。

 まだネイマール頼りで、新しいスーパースターはいない。だが、守りとサイドは充実している。チアゴシウバとマルキーニョスのセンターバックコンビ、アウベスとマルセロの両サイドバック、カゼミロのボランチはもう完璧だ。前にはネイマールがいて、スーパーじゃないけどうまい選手がいる。パウリーニョも今季バルセロナに行ってから調子がいい。

 ベルギーも若い選手が多い。W杯本番ではフランスと並んで注目される。今は欧州の社会が変わって、二重国籍とか移民の影響で黒人が増えた。アフリカ系の人が若くして欧州に来て、代表になるケースも多い。二重国籍のボアテング兄弟が兄はガーナ代表、弟はドイツ代表という例もある。アフリカ勢の人材が欧州に吸収されて、今はW杯でもかつて「旋風」を起こしたような強いアフリカのチームもないし、ウエア(リベリア)やエトー(カメルーン)のような“アフリカ代表”のスーパースターも少ない。一方でオランダやフランス、ベルギーは「白人もいるんだ」という感じになった。

 FIFAランクでもアフリカ勢が落ちてきて、南米や欧州といった上位と、アジアやアフリカなどの下位との実力差が、数字以上に広がっていると思う。(日刊スポーツ評論家)