日本はボールを回すだけのサッカーだった。それが得点できない原因。「どうしても、もう1点取る」というサッカーじゃない。1-1に追いつき、上田を投入しても、そこに放り込むこともない。1-2となって、残り時間が少ないのに横パスばかり。最前線にボールが入らない。小川も上田も田川もほとんどボールに触っていないじゃないか。

「五輪予選」の重圧はないのだから、リスクを冒しても攻める姿勢が見たかった。1対1から抜くなど個人技でチャレンジしてほしかった。危険なシュートは相手の方が多かった。それはドリブルから生まれた。先制点も、PK奪取もドリブルからだった。日本の方が“予選用”のサッカーをしていたみたいだ。

さらに日本がボールを回して相手が疲れるならわかるけど、回した自分たちが疲れてしまっていた。

こんなサッカーをしていたら、東京五輪でのメダル獲得は難しいだろう。堂安や久保ら海外組とオーバーエージ(OA)が入れば大きく変わるはず、という考えは甘いと思う。ちゃんとしたチームの基盤があってこそ、海外組やOAが大きなプラスとなる。今のチームは基盤ができていない。少なくとも、今回のチームからスターが生まれる気配を感じない。

昨年末の親善試合ジャマイカ戦で9-0と大勝した後だったから、難しかったとは思う。大勝すると錯覚してしまいがちなんだ。ジャマイカよりサウジアラビアの方が強かったし、6人交代の親善試合と真剣勝負とは全く違う。

中2日の厳しい日程の中では、初戦が重要だ。2戦目以降は疲労などからメンバー変更を強いられる。とかく初戦は引き分けでもよし、と手堅くなりがちだが、勝ち点3を取ると大きなアドバンテージだ。これは暑さ同様に東京五輪本番と同じだ。(日刊スポーツ評論家)