久保を先発で使うとしたら、左だね。カメルーン戦で伊東が右でよかったからね。久保は今回、トップ下3人の左で、ライン際まで開いたところで長い時間、プレーさせるんじゃないかな。伊東が右でライン際から縦に駆け上がり、久保は左から中へドリブルを仕掛けてトップと絡んだり、良質のクロスを上げれば、チームとして効率のいい攻めができるんじゃないかな。自然と南野の中央突破も生きるはずだよ。

プレースタイルから、久保は中央の位置でレギュラーを取った方がいい。しかし今の彼には、そこで耐えられるほどの力はない。ボールを持つと、後ろからも横からも前からも相手が寄ってくる。あっという間に囲まれて困ってしまうだろう。それなら、サイドラインを背に、後ろからのプレッシャーを排除してからドリブルを仕掛けた方が、より威力を増すだろうね。

オール海外組でも、19歳の彼が最も注目されるのは酷な現実だが、今の日本はマスコミもスポンサーも協会もファンも、誰もが彼から日本サッカーの将来を描こうとしている。ただ念頭に置いてほしいことは、みんなは久保のことをレアル・マドリードのMFと思っているが、現実はビリャレアルの控え選手だということ。リーグ戦には20分程度しか出られないし、レギュラーだった昨季はマジョルカでもFKは蹴らせてもらえなかった。

これから伸びようとする若手に過剰なプレッシャーをかけることは、選手にもファンにもよくないね。左で伸び伸びとプレーさせ、流れやタイミングによってトップ下中央とポジションを変えながら攻めるとか、試合中にいろんなアイデアを持って徐々にプレー幅を広げればいいんだ。自分で全部を背負う必要はないよ。

久保には、最後までやりきる力をつけてほしいね。1人かわして2人かわせば、日本では絶賛される。でも、3人目でつぶされては意味がないんだ。経過を評価されるようではダメ。結果をしっかり残さないとね。ネイマールやメッシは3人目でつぶされたらブーイングされるからね。約1年ぶりの試合でカメルーンに引き分けた。今回は、久保も日本代表もしっかり結果を出してほしいね。代表は「次につながる」じゃダメなんだよ。(日刊スポーツ評論家)

ドリブルで突破を図る久保(2020年10月9日撮影)
ドリブルで突破を図る久保(2020年10月9日撮影)