U-20(20歳以下)ワールドカップ(W杯)で、日本が決勝トーナメント進出を決めた。この年代は、過去5大会連続で世界への扉をこじ開けられなかった。当時、大きな危機感を持って、さまざまな施策にトライしてきた成果がやっと出てきた(と思うと素直にうれしい)。一緒に仕事をしてきた木村浩吉ダイレクターや内山監督以下スタッフの良い仕事がもっと評価されてほしいと思う。

 イタリア戦2得点のMF堂安は、J3のガンバ大阪のU-23で出場経験を増やし、得点を量産した。J3でのプレーは卒業し、今大会直前にはJ1に3試合フル出場し3得点を記録している。

 柏の中山も昨季、U-22のJリーグ選抜でJ3を戦って試合経験を積み、今やトップチームのレギュラーにまで成長してきた。ここで必要な認識は、日本のポスト18歳世代をどう鍛えて成長させる仕組みを作ることができるか、ということだ。18歳までは、ユースや高校で毎週、公式戦ができる。高校サッカーの環境も世界に誇れるシステムだ。だが、卒業後、プロになりJクラブのトップチームですぐに試合に出場できる選手の数が圧倒的に少ない。

 選手は、練習でも成長するが、実戦を積むことで成長は加速する。高卒ルーキーが実戦経験を積めないのが、今の国内の現状だ。このジレンマが、日本代表の世代交代を邪魔する。下からどんどん若手が出てくる環境をつくっていかないと、永続的に日本がサッカー先進国の仲間入りができないのである。

 昨年のトゥーロン国際ユース大会で、ポルトガル代表の育成ダイレクターのパウレタ氏と話をした。ポルトガルは、ポルト、スポルティング、ベンフィカと国内ビッククラブがあるものの、欧州内では小国だ。ただCロナルド、フィーゴ、ルイコスタといった世界的な選手を生み出し、ビッグリーグへの選手供給国として繁栄している。1部リーグの6クラブがBチームを作って、2部リーグに参戦している。今回のU-20ポルトガル代表は、ほとんどが、このリーグでプレー経験を積んでいる。この仕組みを作ってからは、17、20歳の選手がほとんど毎週2部リーグで厳しい公式戦を戦う環境が整備された。こうして成長したU-23の五輪世代ではトップリーグの試合に出場する選手が増えていく。

 今、世界には、選手購入国と供給国がある。ブンデスやプレミアなどの観点からだと、ポルトガルやベルギーのように日本は選手供給国である(昔は購入国だったが…)。需要と供給のバランスはもちろんあるし、世界のマーケットでは、まだ日本人選手の価値はそれほど高くない。

 ただ需要がある以上、供給を止めてはいけない。強豪国が欲しがるような若手を育成し続けるシステムを構築することが必要で、このシステムが定着することが、日本がいずれW杯でベスト4に入る近道になると信じる。考えてみてほしい。欧州チャンピオンズリーグに出場するようなビッグクラブに日本人選手がいて、彼らが代表戦で集まり、日本のためにプレーする。想像するだけでも鳥肌が立つ。

 選手同様、指導者も同じことが言える。国内だけの価値観ではなく、強豪国のリーグや世界大会を常に意識し勉強することで、フットボールは発展させられる。目の前の勝敗にこだわることと同時に、良いプレーとそうでないプレーの基準を鮮明に挙げていくことが必要だ。「ウチにはいい選手がいない。国際レベルにない」といった、チーム事情はあるかもしれない。しかし、指導者があきらめてしまったら選手は成長しない。

 地理的なこともあり、日本はなかなか日常で世界を体感することはできない。世界サッカーの主流である欧州や南米と頻繁に対戦することはできない。それなら、世界に出るしかない。日本が「ACLやW杯で勝つには?」と問われると、私はちゅうちょなく言える。「世界に出て戦い続けるしかない」と。