上に立つ人間たるもの、デーンと構えていればいいと思うのですがねぇ。まあ、私なんぞ、もう40歳になるというのに、いまだに上に立ったことがないですけれど…。

 「カッコイイ上司」なんて、あくまで理想論で、出世した途端に、生き方を変えちゃう人って、どこの世界にもいますもんねぇ。まあ、でも、やりたい放題の上司に、ろくな人はいない。なんて、ね。

 いきなり、なんの話やねん? そう思うでしょう。

 日本代表のハリルホジッチ監督のことです。6月に国内であった代表合宿を取材してきました。これまでジーコ、オシム、岡田、ザッケローニ、アギーレ監督と10年も代表を追い続けてきましたが、こんなに神経質な監督はなかなかいない。

 今回の合宿から取材できる選手が制限されたのは、新聞紙上でも話題になりました。これまではW杯を除き、選手全員が取材エリア(ミックスゾーン)を通ってから宿舎に戻ったのですが、6月からは協会が指名した6人程度が取材に応じるという方式に変更。しかもハリルホジッチ監督が、取材エリアで選手が何を話しているか、目を光らせているんですねぇ。話が長引いている選手には、広報に目配せをして、もう取材を中止するように合図する始末。情報漏れを心配しているのか? そもそも選手を信頼していないのか? ちょっと、異様な光景でした。

 「あんな具合に、監督は広報にもいろいろ要求してきますからね。さすがに広報も参っていますよ。大丈夫かな」

 日本協会の担当者も「やりすぎ感」のある同監督の行動を、疑問視していました。

 取材する側としては、自由に選手の声は聞きたいもの。ただ、我々メディア側の一方的な欲求だけでなく、やはりハリルホジッチ監督の“行動”は、私の目には不可解に映るのです。

 16日の18年W杯アジア予選シンガポール戦でのこと。選手を代える際、監督の指示で交代カードを第4の審判に持って行ったのが、なんと日本協会の霜田正浩技術委員長(48)だったのです。同技術委員長は、ハリルホジッチ監督の招聘(しょうへい)に動いた人。クラブでたとえるなら、強化部長、もしくはGM的な立場のはず。仮に同監督が成績不振に陥った場合、解任通告をするのが、技術委員長の最大の任務。その霜田技術委員長が、監督にアゴで使われているとは…。

 監督とは、現場レベルでは“最高責任者”。しかし、ピッチ外まで最大の権力は与えられていないはず。 ここまでのやりたい放題の自由を与えてしまって、いいのだろうか。【日本代表担当=益子浩一】


 ◆益子浩一(ましこ・こういち)1975年(昭50)4月18日、茨城県日立市生まれ。00年大阪本社入社。04年からサッカー担当。サッカーW杯は10年南アフリカ大会、14年ブラジル大会。ラグビーW杯は11年ニュージーランド大会を取材。