昨年の福岡のJ1昇格といい、全国高校サッカー選手権の東福岡優勝といい、担当記者として年末年始にかけて縁起のいいニュースに接した。申(さる)年生まれの年男としてはうれしい限りだ。

 今回の選手権では、優勝候補筆頭の東福岡が評判通りの力で圧倒した。MF中島(横浜)、MF増山(神戸)らを擁した前回のタレント軍団から残った主力は2人だけ。しかも、Jリーグ内定者は1人もいない。それでも前回16強で敗退した教訓をバネに、全国高校総体との「夏冬2冠」を成し遂げた。そこには、名門復活を願う選手たちの意地や執念があったように思う。

 特にそう感じたのは、主将のMF中村健人(3年)だ。大分県からサッカーをうまくなりたい一心で東福岡の門をたたいた。父主夫(もとお)さん(46)が「超負けず嫌い」と話す根性の持ち主。昨年12月26日の博多出発時、風邪で39度の熱があった。主夫さんは「主将のプレッシャーの中で選手権出場を決め、プレミアリーグ西地区で2位になってホッとしたのかもしれない」と思いやった。中村は同30日の開会式を欠席し、31日の1回戦も万全でない中、先発しチームをけん引。「まだ納得いく試合ではなかった」と話したが、体調不良を感じさせないプレーだった。

 燃える理由もあった。同じく選手権に出場した大津FW一美(いちみ)の存在だ。ともに日本協会運営のJFAアカデミー熊本宇城(うき)で中学3年間学んだ。一美が高3でU-18(18歳以下)日本代表に選ばれた時のこと。主夫さんは「悔しいと言っていた。なんで自分が選ばれないんだと。だから選手権でアピールする。見る人が見たら分かってくれる、と話していました」と明かした。ライバルの前で発熱ごときで弱音は吐けなかった。

 そんな中村は卒業後、明大に進学する。「大学でJリーグの特別指定選手になり、卒業後はJリーグでプレーして数年でドイツに行きたい」と夢を語る。東福岡-明大卒というルートをたどったOB長友(インテルミラノ)の存在にも触れ「長友さんは明大で新しいポジションで、新しい立ち位置を見つけた。大学で足りない部分を補い、将来活躍できる選手を目指したい」。意地や執念といった自分に似通った泥臭さを感じ、その背中を負うつもりだ。

 中村ら東福岡イレブンは20年東京五輪世代でもある。彼らの将来を大いに期待したいと思う。【菊川光一】


 ◆菊川光一(きくかわ・こういち)1968年(昭43)4月14日、福岡市生まれ。福岡大大濠高-西南大卒。93年入社。写真部などを経て現在報道部で主にJリーグなど一般スポーツを担当。プロ野球等のカメラマンも兼務する“二刀流記者”。スポーツ歴は野球、陸上・中長距離。