それはまるで会社の会議室で行われているプレゼンテーションを見ているようだった。

 新たに19人選手が加入し、24人の選手が退団するJ2千葉の高橋悠太GM(34)が「2016キックオフフェスタ!」で行った編成の方針や狙いについての説明である。神戸の強化担当などを経て、昨年11月に千葉のGMに就任した。

 パワーポイントのような資料をスクリーンに映し出し、「3つのポイント」を挙げた。「ジェフでやりたいという強い意志がある選手」「クラブの意向と監督の意向のすり合わせ」「チームとしての課題、昇格チームとの差分」。それぞれに補足の説明を加えた。過去6年のJ2で3位までのクラブの勝ち点、得点、失点数も示した。そして昇格へのポイントも「年間70得点以上、40失点以下」「6年間で自動昇格のチームは2回以上の連敗がない」など、とにかく説明が具体的だ。妙に納得した。

 主張を整理して、端的に説明、数字の提示し説得力ももたせる。まさに営業マンの手法である。聞けば、高橋GMは05年から09年まで楽天に勤務し、西日本エリアの営業の統括を努めていたこともあったという。「人を動かす動機は何でもいいと思うんですけど、数字を使ってちゃんと把握させるのは大事。だからあえて出して数字をはっきりやってました」。楽天での仕事の経験を、GM業にも応用している。

 過去最大の選手の入れ替えに新GMの熱意と本気度が伝わった。J2・7年目を迎えるチームの劇薬となるかもしれない。

 ただである。大幅な選手の入れ替えは、副作用が大きい。結果が出なければ、ファン離れを招く恐れもある。チームも空中分解しかねない。批判にさらされることは必至だ。それも忘れてならない。

 就任1年目から大改革で勝負に出た若手GM。その心意気を応援したくなった。


 ◆上田悠太(うえだ・ゆうた)1989年(平元)7月17日、千葉県市川市生まれ。明大を卒業後、14年に入社。文化社会部の芸能班に配属されTBSなどを取材。昨年11月からスポーツ部に異動し、今季から湘南、柏、千葉を担当。Hデスクの影響を受け、最近温泉巡りにはまりつつある。