“東大くん”が、社会人2年目を迎えた。昨季、東大を卒業し、J3藤枝MYFCに加入したMF添田隆司(23)だ。

 就職活動では4社の内定を取りながら、仕事とサッカーの両立を目指して藤枝MYFC入りを決断。サッカー選手として、そして会社員として、挑戦する道を選んだ。

 午前中に練習を終えると、ジャージーからスーツに着替えてオフィスに向かう。株式会社藤枝MYFCの経営企画部に所属する社員として、仕事をこなしている。2年目の今年からは、企画の責任者も務めている。無料体験会が始まったばかりの「超初心者向け大人サッカー教室」だ。企画から集客まですべてをこなしている。チラシを手にした人から「初めて藤枝MYFCというチームを知った」と言われることもあるといい、手応えも得ている。「自分のやったことが、成果につながる。藤枝MYFCを知らない人に広めたり、サッカーを楽しんでもらうこともJクラブの使命だと思う」。

 昨年は練習と仕事の疲労が蓄積し、コンディションの維持が難しい時期もあった。それでも時間の経過とともに慣れ、コントロールできるようになった。「仕事量も増えていて、時間のやりくりをするのが大変」と言いながら、表情は充実している。

 サッカー選手としては、昨季は8試合に出場。今季は5節を終えてベンチ入りはゼロだ。今季のチームは、MF鮫島晃太(23)、FW大迫希(27)らJリーグでの経験が豊富な選手が加入。選手層が厚くなり、ベンチ入りをすることも難しくなった。それでも「まだ試合にからめるくらいまで、成長していないだけ。もっとうまくなりたいと、前向きにとらえている」と言い、練習をこなしている。

 東大卒のJリーガーとして、加入時には話題になった。“東大くん”と呼ばれることについては「それで新聞の見出しになるなら、存分に使っていただいてかまいません」。サッカー選手と会社員という二足のわらじは大変だが、やりがいを感じている。選手として、社員としてクラブに携わる特殊な立場で、地域に愛されるクラブ作りを目標に掲げている。「サッカー選手と会社員と両立できるやり方があるということを伝えたい。まだ東大卒のJリーガーとしての価値を示せていないので、どっちもしっかりできるやり方を示したい」。挑戦は、まだ始まったばかりだ。【保坂恭子】


 ◆保坂恭子(ほさか・のりこ)1987年(昭62)6月23日、山梨県生まれ。埼玉県育ち。10年入社。サッカーや五輪スポーツ取材を経て、昨年5月から静岡支局に異動。J1磐田と、J3藤枝MYFCも担当。静岡生活もまもなく1年。「~じゃんね」と、しぞーか弁が自然に出るようになりました。