J1は普段、試合が行われれば紙面ではもちろん、テレビのスポーツ番組でも取り上げられます。J2も横浜FCのFWカズ(三浦知良)の影響もあり、試合結果が報じられる機会はあります。一方で創設されて3シーズン目のJ3は、ほとんど目に触れられることがないのが現実。ですが、J1、J2にはない魅力がJ3にはあると思います。

 5月15日のJ3第9節、藤枝対相模原(0-1)の試合後、驚くべき“事件”が起きました。試合後、相模原の薩川了洋監督(44)の会見が終わりかけたとき、会見場に入ってきた人がいました。対戦相手、藤枝の大石篤人監督(39)です。気付いた薩川監督から水を向けられると、大石監督は「どうしたら勝てますか?」とまさかの質問を投げかけ、薩川監督は笑いだしました。

 藤枝は今季、若手を多く起用しており、この試合の先発11人の平均年齢は25・27歳。一方の相模原は元日本代表GK川口能活(40)が先発し、平均年齢は30歳でした。そこで薩川監督は、「ベテランを入れなきゃいけませんよ」とアドバイス。大石監督も笑いました。

 この試合、両チームとも守備的に引くことはせず、積極的に攻撃を仕掛けました。持ち味を出し合い、シュート数はどちらも12本とまさに接戦。最後に、薩川監督は「藤枝も最後まで粘ってきてくれた。ありがとう」とあいさつ。大石監督も「ありがとうございます」と返しました。

 J1やJ2の試合後に、会見場で両チームの監督が顔を合わせ、さらに質問をするということは、まずあり得ません。プライベートで仲のいい監督同士が、ピッチ際で言葉を交わす場面は見たことがありますが、今回のケースは初めてでした。敗れたチームの監督が、相手の監督に質問することは、ほぼ“事件”です。帰り際、薩川監督は「こういうのが、いいよね」と漏らしました。「こういうの、J3リーグでしか出来ないんだよね。J3の魅力だと思うよ」と。一方、大石監督は「試合にも負けて、会見にも負けたので、次がんばりたい」と悔しがっていました。

 たしかにJ3は、アットホーム感が強いです。クラブとサポーター、サポーターと選手、それぞれの距離が近いのが特徴と言えます。監督会見は報道陣しか出席できませんが、スタジアムの雰囲気が、そのまま会見にもつながっていると思います。J3は、全国に16チームあります。ぜひ、J3ならではの雰囲気を味わってみてください。

 ◆保坂恭子(ほさか・のりこ)1987年(昭62)6月23日、山梨県生まれ。埼玉県育ち。10年入社。サッカーや五輪スポーツ取材を経て、昨年5月から静岡支局に異動。J1磐田と、J3藤枝MYFCの担当。静岡生活は1年が経過。おでんと言えば、しぞーかおでん。暑くても、食べたくなります。