天国の祖母のためにも新天地で輝いてほしい-。東京移籍が決定的な鳥栖の日本代表GK林彰洋(29)が12月11日、本拠地のベアスタで行われた今季のシーズン報告会で自ら移籍を発表した。

 ファン約3000人を前にしたあいさつの中で「皆さんに報告があります」と切り出し、「僕は今年でチームを離れることになりました。まだチームのオフィシャルな発表がないので皆さんに一番最初に伝えたいと思い、この場で発表させていただきました」と、涙で言葉を詰まらせながら報告した。

 移籍を決意した理由を「祖母が103歳という年で最後に1回試合を見せられるかなと、そういう思いで某チームを選びました」と明かした。最近亡くなった最愛の祖母の存在が大きかった。当然、クラブは全力で慰留に努めていた。竹原稔社長(55)によると「日本でトップ、一番のゴールキーパー。残留へは8月1日から慰留の話をし、全力をかけて残るようにしておりました」。だが「金銭、環境、チームメートがというところではなく、シンプルに純粋なところが理由だったので慰留できなかった。ピュアなところの動機で難しかった」と引き留められなかった。

 だが一方、覚悟も示した。「やるからには鳥栖と戦うこともあると思います。その時は全力で成長した姿を見せ、敵にして嫌だと思われるパフォーマンスをしていきたい。それを皆さんへの恩返しの形として見せたい」と前を向く。今季、特に前半戦で奮わず年間11位の成績を踏まえ「悔しさ、ふがいない気持ちが入り交じった中で皆さんに(移籍の)報告をしなければいけないことは辛かった」とも話した。「鳥栖で日本代表のレギュラーを取りたいと思っていた」。鳥栖在籍3年半で培った力を糧に、祖母を亡くした悲しみも乗り越え、さらなる高みを目指してほしい。【菊川光一】

 ◆菊川光一(きくかわ・こういち)1968年(昭43)4月14日、福岡市生まれ。福岡大大濠高-西南大卒。93年入社。写真部などを経て現在報道部で主にJリーグなど一般スポーツを担当、プロ野球等のカメラマンも兼務する。スポーツ歴は野球、陸上・中長距離。