MF柴崎岳(24)が、ついに念願だった欧州移籍を決めた。J1鹿島からスペイン2部テネリフェへ。日本代表デビュー戦でゴールを決めたように、平均点の高いプレーは通用すると思う。だが、自身のベストの状態を維持して、力を発揮することができるのだろうか? 少しだけ疑問を抱いている。

 スペイン人は陽気な性格に加え、家族のような密接な関係を好むと聞いた。日刊スポーツの通信員によれば、柴崎が移籍したスペイン領カナリア諸島の島々は、特にフレンドリーな環境だという。鹿島時代のチームメートも「岳の本心は分からない」「あいつは宇宙人」と冗談ぽく表現するほど、柴崎はピッチ外では自分の時間を大切にする。

 移籍準備のために鹿島のタイ遠征を免除されていた1月22日、こんなこともあった。チームの出発を見送り、鹿島クラブハウスへ向かうと、1人で練習する柴崎の姿があった。ボール10個を自分で運ぶと、黙々とシュート練習。蹴り終わると、自分で拾いに行く。少しでも協力できればと、私は「ボール拾いくらい、手伝いますよ」と声をかけた。無言。何の反応もなかった。1人で集中したかったのかもしれない。柴崎は反対側のゴールに9個のボールを次々に蹴る。最後の1個はドリブルで逆サイドに運んだ。そしてまた、1人でシュート練習を繰り返した。

 日本では多くを語ることが少なかった柴崎が、テネリフェ島に到着後、サムアップポーズで報道陣に笑顔を見せるなど、変化が見えた。正直、驚いた。スペイン語の勉強も着々と進んでいるようだ。だが、ホームのサポーターたちには居住地も知られ、街で発見されれば、あたりまえのように「GAKU~」と声をかけられることも増えるだろう。日本の環境とはまるで違う。そういった文化に対応できなければ、サッカーの成功はないかもしれない。

 契約は今季終了までの5カ月。1部昇格できれば、自動的に1年更新されるオプションもついた。スペイン2部で活躍し、1部からのオファーも殺到してほしい。ドイツやイングランドの強豪に移籍するのもうれしい。日本代表にも復帰、そして定着も願う。そのためにも、まずはテネリフェ島の島民に愛されることが、必要不可欠だと思う。【鎌田直秀】



 ◆鎌田直秀(かまだ・なおひで)1975年(昭50)7月8日、水戸市出身。土浦日大-日大時代には軟式野球部所属。98年入社。販売局、編集局整理部を経て、サッカー担当に。相撲担当や、五輪競技担当も経験し、16年11月にサッカー担当復帰。J1鹿島、J2横浜FCなどを担当。今季の目標は10キロ減量。