連日、野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から目が離せない。

 そんな私は、記者としての大半を野球取材に費やしてきたので、サッカーについては素人だ。なので、サッカー界では常識となっていることも、分からない。今季から担当するJ1のコンサドーレ札幌サポーターには迷惑な話だろうが、優しく見守っていただければと思う。

 さて、久々にJ1の舞台へ戻ってきた札幌の話である。11日、今季3試合目で迎えた本拠地開幕戦で、C大阪に1-1で引き分け、J1では5季ぶりの勝ち点を手にした。昨季、J2では本拠地の札幌ドームで14勝3分け1敗。無類の勝負強さを誇っており、C大阪戦で後半に同点ゴールを決めたエースFW都倉賢(30)も「札幌ドームでは負けない自信があった」と、本拠地への愛着と信頼を口にした。

 この札幌ドーム、相手にとっては“異空間”、かつ“魔空間”となるようだ。プロ野球日本ハムの本拠地としておなじみだが、サッカー開催時には中堅の外野壁がパカッと開き、屋外で育った天然芝のフィールドが、ぐぐっとドームの中に移動する。国内唯一の完全屋内天然芝サッカースタジアムで、今季、他クラブから移籍した選手たちは、一様に興味を示した。

 大宮アルディージャから期限付きでやって来たMF横山知伸(31)は「浮いたボールが気になった」と言う。ロングボールでは、顕著だ。「風がないから無回転になって、浮き球の軌道が難しいんです」。現在センターバックで最後列を守るが、セレッソ大阪戦では相手の意表を突くミドルシュートで、相手ゴールを脅かした。実は、このシュート、意図せず無回転となったもの。「去年の清水エスパルス戦でも、相手DFが目測を誤る場面があった。試合を重ねれば慣れるし、逆にホームの大きなアドバンテージになると思う」。守るときは厄介でも、攻撃では大きな武器に。野球では、よく「風を利用する」と言うが、屋外でのプレーが一般的なJリーグにおいては、無風であることが、時に予測不能の“魔球”を生むのだなと思った。

 ベガルタ仙台から移籍したFW金園英学(28)は「ミスチルになってコンサートをしているような、不思議な感覚だった。喉がカラカラになりましたね」と独特の表現をした。まぁ、喉が渇いたのは風がないからなのだが、そこは愛嬌(あいきょう)。横浜から加入のMF兵藤慎剛(31)は開幕戦の終了間際に両脚をつり「思っていたより汗をかくので、水分をこまめに取らないといけない」と、注意点を挙げた。

 開幕前には、普段はドーム外にある天然芝のピッチを、サポーター有志らボランティアスタッフが除雪するのが恒例となっている。愛情がしみこんだ芝の上で、どんなドラマを繰り広げるか。魔空間が生み出すマジックに期待したい。

 ◆中島宙恵(なかじま・おきえ)札幌市出身。昨年、不惑を迎えた。立命大卒業後、某通信社で約10年の記者生活を経て、2011年北海道日刊スポーツへ移籍。プロ担当は、野球の横浜(現DeNA)ヤクルト、日本ハムに続いて、札幌が4チーム目。