今年からJ3アスルクラロ沼津の担当になりました。Jリーグ初参戦のチームは、3月25日の藤枝との「静岡ダービー」で4-1の快勝。Jリーグ初勝利を飾り、新しい歴史の1ページを刻みました。

 本格的に沼津の取材を始めて約4カ月。取材を通じて強く思うことがあります。「J3のチームは本当にJクラブ(プロのクラブ)と言えるのか」ということです。彼らが置かれている環境が、決して恵まれてはいないからです。

 例えば練習場です。沼津の場合、クラブが所有する天然芝の専用練習場がありません。日によって場所が変わり、時には市内の高校のグラウンドを借りることも。それでも、練習場が確保できない時は、野球場の外野の芝生を使って練習しています。この光景を将来プロ選手を目指している子どもたちが見たらどう思うでしょうか…。いちクラブの努力だけで解決できない問題は、Jリーグ全体で真剣に考え、議論していかなければいけないと思います。

 もう1つ気掛かりなことがあります。Jリーグ規約では「J3はプロ契約を結ぶ選手が3人以上在籍する」と定められています。つまり、「3人いればいい」ということです。現実に沼津の選手は大半がアマ契約で、朝8時過ぎから練習を始め、練習後は足早に別の職場に向かっています。体をケアする時間もなければ、リフレッシュする時間も限られています。その状況下、「プロ」としてのクオリティーを発揮することは決して簡単ではありません。

 それでも、選手は全力でプレーしています。J1やJ2の選手と同様、スタジアムに足を運んで応援してくれるファンやサポーターのために必死で勝利を目指しています。厳しい現状はありますが、J3とはいえ「Jリーガー」としてのプライドを持ってピッチに立っています。

 今年でJ3は発足4年目。リーグ全体の平均入場者数は右肩上がりで年々増えています。しかし、平均は約3000人。J2の平均入場者数の半分にも満たない数字です。この現実を沼津の取材を通じて知り、より強く思ったことがあります。もっと多くの人にスタジアムに足を運んで試合を見てほしい。人生を懸けて必死にプレーする選手たち。それこそ「プロ」の本質を見られると思うので。


 ◆神谷亮磨(かみや・りょうま)1985年(昭60)8月28日、静岡市清水区生まれ。幼稚園からサッカーを始め、高校は東海大静岡翔洋(旧東海大一)でプレー。08年入社。担当は11、12年にJ2磐田、13、14年にアマチュアサッカー、15年から清水。