ジュビロ磐田FW小川航基(19)が、26日のルヴァン杯FC東京戦でプロ初得点を決めた。先制点を皮切りに、同杯最年少記録となる19歳8カ月18日でのハットトリックも達成した。喜びを爆発させた小川航自身の姿はもちろんだったが、名波浩監督(44)の会見でのコメントが印象に残った。

 「プロ初ゴールの試合で3点。インパクトとしては素晴らしい。記者の皆さんやサポーター以上に僕自身は、ご両親と同じ気持ちで彼が点を取るのを首を長くして待っていた。非常に気分が良いです」

 小川航が16年に入団して以降、ここまでの月日があっての言葉だと思った。名波監督は全体練習後、毎日にように若手主体のシュート練習を行う。その1人、小川航にも自らパスを出し続けてきた。さらに言えば、今季チームのFW登録は3人と少ない。MFアダイウトン(26)がFWでプレーできることもあるが、指揮官は「若手の成長にふたをしたくない」と補強をせず、若きストライカーの成長を信じて開幕を迎えた。

 新たな1歩を踏み出した小川航も「監督が練習後に付きっきりでシュート練習をしてくれる環境は他にない。本当にありがたいことですし、早く恩返しをしたいと思っていました。次はリーグで決めて、もっと恩返しをしていきたいと思います」と、感謝の言葉が止まらなかった。

 例えとしては間違っているのかもしれないが、東日本大震災の影響で開催地が日本からモスクワ(ロシア)に移った11年のフィギュアスケート世界選手権で安藤美姫が「日本のために」と言って優勝した。同様に、人は「誰かのために」という思いで強くなれるとあらためて感じた。

 来月20日にはメンバー入りが有力なU-20(20歳以下)W杯韓国大会が開幕する。20年東京五輪エース候補の小川は「磐田の顔となり、日本を代表するストライカーになりたい」と、さらなる成長を誓った。名波監督も「もっと爆発してほしいね」と“息子”の躍進に期待を寄せた。親のように成長を手助けしてくれる「名波さん」の期待に応えたい-。その思いが、小川航の大きな原動力になっていくだろう。

 ◆前田和哉(まえだ・かずや)1982年(昭57)8月16日、静岡市生まれ。小2からサッカーを始め、高校は清水商(現清水桜が丘)に所属。10年入社。昨年までは高校サッカーを取材し、今年から磐田担当。