「いろいろなことに覚悟を持って臨まなければならない」。今のアルビレックス新潟に最も必要な心構えだろう。この言葉を常々口にしていたのが、内田潤コーチ(39)だ。

 7日に休養した三浦文丈前監督(46=11日に辞任)の後を受け、片渕浩一郎コーチ(42)が監督代行に。内田コーチはそれとともに、新潟U-15のコーチからトップチームのコーチに就任した。新潟は11試合を終えて勝ち点5で最下位の18位。J2降格圏であえぐチームの中で、内田コーチは選手を鼓舞し続けてきた。

 選手には厳しい態度で接した。「まだ20試合以上ある、という感覚の選手がいる」「試合を見ても、プレスに行った気になって、そばに寄っているだけ」。プレー、精神面で選手に欠けている部分をはっきりと指摘した。「こうなったのは自分たちの責任。去っていったフミさん(三浦前監督)のせいにするな」。ミーティングでは口にしづらいこともはっきりと言った。

 自身が覚悟を持って臨んでいる。06年に鹿島から新潟に移籍。13年に引退するまで、選手会長を務めるなど、選手、サポーターから絶大な信頼を得た。

 信念は「僕を拾ってくれた新潟のために生きる」。現役時代はフロントと話し合って、試合前に選手がスタンドに投げ入れるグッズを用意した。最終節で残留が決まった12年、チームメートを集めて言った。「来年のことを考えているやつは、明日から休んでくれ。気持ちのあるやつだけでやろう」。自ら膝の故障で戦線を離脱して時期だったが、誰よりも危機感を持ち、新潟への思いを示した。

 今もその姿勢は変わらない。「自分のためだけにサッカーをやるのではない。サポーター、支えてくれるスタッフ、家族。誰かのためにやる。苦しいときほどその覚悟が必要」。ピッチに立つからには、多くの人のさまざまな思いを背負うことになる。厳しい現実にさらされたときこそ、本気度が試される。

 今の状況を招いたこと、そこから脱出するために必要な覚悟が、新潟の選手にあるのかどうか。15日に呂比須ワグナー新監督(48)の就任会見が行われた。内田コーチはトップチームを離れ、下部組織のコーチに復帰する。

 彼が訴え続けてきたことが、新体制の下で実を結びことを祈りたい。

【斎藤慎一郎】



 ◆斎藤慎一郎(さいとう・しんいちろう)1967年(昭42)1月12日、新潟県出身。15年9月から新潟版を担当。新潟はJ2時代から取材。サッカー以外にはBリーグ、Wリーグのバスケットボール、高校スポーツなど担当。