ジュビロ磐田が勢いに乗っています。8日前節のホーム甲府戦を1-0で勝利し、11年ぶりに5連勝を達成しました。0-0の前半14分、MF中村俊輔(39)が相手選手の股を抜く縦パスで攻撃のスイッチを入れ、決勝点となる先制点の起点になりました。今年6月で39歳を迎えた背番号「10」は、この一戦だけでなく1日のアウェー新潟戦、6月25日のホーム東京戦でも絶妙な「タメ」から先制点を演出。現在の好調を支えています。

 先日、ある光景を目にしました。チーム全体練習終了後、いつものように中村俊が居残り練習を開始。FK、シュート練習と炎天下の中、黙々とボールを蹴っていました。

 現在は戦列復帰している中村俊ですが、5月下旬に左太もも裏を肉離れ。まだ、傷は完全に癒えていません。患部の状態を心配する名波浩監督(44)は「中村、早く帰れ!」と、怒り気味に伝えました。中村俊も「はい!」と返事。しかし、一向に帰らない…。名波監督は「いつも返事だけだな」と、冗談交じりに一言。一緒に昼食を約束していたMF松井大輔(36)も待ちきれずに、先に練習場を後にしました。結局、自主練習は1時間以上も続きました。

 今季開幕前の鹿児島キャンプで、本人に自主練習について聞いたことがあります。その時はこう答えました。

 「自分の感覚を確かめられたり、一番うまくなれる時間だと思っている」

 努力とは-。広辞苑には「目標実現のため、心身を労してつとめること」と記されています。中村俊は、新体制発表会見で「期待は十分に分かっているので、後はグラウンドで示すのが1番。ジュビロファンの方々から『あいつを取って間違いなかった』と思われるように、精いっぱいプレーしたい」と語っています。目標を達成するため、高いパフォーマンスを維持する。そのための努力は、これまでに残した実績に関係なく、日々の居残り練習や体のケアなど常に徹底しています。もう、脱帽です。

 発明家エジソンの「天才とは、1%のひらめきと99%の努力」という言葉を借りれば、やはり中村俊は天才だと思う光景でした。


 ◆前田和哉(まえだ・かずや)1982年(昭57)8月16日、静岡市生まれ。小2からサッカーを始め、高校は清水商(現清水桜が丘)に所属。10年入社。昨年までは高校サッカーを取材し、今年から磐田担当。