ガンバ大阪が苦境に立たされている。

 特に本拠地の吹田Sで勝てていない。今季公式戦は6勝4分け6敗。

 ただ2勝は、格下のACLのプレーオフで戦ったジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)、天皇杯2回戦のV大分(JFL)を含んでいる。直近5試合でいうと、大阪ダービーの1勝だけ(1勝1分け3敗)。なかなか勝てていない要因の1つは明らかで「芝生問題」だ。

 上層階にある記者席から見ても、今年は昨年に比べて「ヒドイ」の一言。酷使される両サイドはハゲてしまい、芝生がない。茶色い土がむき出しになっている。ピッチ上の選手からは「少し滑らせただけで芝生が根こそぎ取れてしまう」「柔らかすぎて、芝生と土がバラバラな感じ。根付いていない」との声が聞かれ「ガンバの生命線であるパスサッカーが難しい」という。

 芝が育ちにくいメカニズムは1度書いたことがあるが、まず太陽光が当たりにくいこと。芝生の育成を考慮して、南側の屋根(アウェーゴール裏側)はガラスになっているが、ガラスを通すことによって日光の照射量は直接浴びるより10分の1になってしまう。

 「欧州のスタジアムは育ってるやん」という声もあるかもしれないが、ここは日本。欧州では、日射量が少なく涼しい気候を好む冬芝を使用するが、大阪は夏が暑すぎて冬芝を通年使用できない。夏には夏芝(冬芝は枯れている状態)、冬には冬芝(夏芝は枯れている状態)で使用するスタジアムは多い。

 ここまでは昨年も分かっていたこと。昨季から使用する吹田Sだが、16年シーズン序盤は芝が育たずに選手も慣れるのに苦労した。2年目を迎える今季。選手も慣れてきたところで新たな問題が浮上した。

 簡単に言うと、今の吹田Sの芝は「夏芝も冬芝も育っていない」いわば最悪の状況。原因の1つが昨冬のクラブW杯と天皇杯決勝だ。シーズン終了後に試合を開催するため「冬芝」を強化し、冬場を耐え抜いたが、思わぬ弊害もあった。冬芝が育ちすぎて夏芝の生育を妨害してしまったのだ。要するに、この夏の時期には冬芝が枯れ、夏芝が入れ替わりで出てくるのが普通だが、夏芝が育たなかったため元気な夏芝が出てこなかった。共倒れ状態になってしまったのだ。

 部分的に補修して対策はしているが、既に全面張り替えしなければいけない状態。神戸市のノエスタはギリギリ通年で冬芝を使用できる環境で、スタジアムの屋根も閉められるため、送風機なども利用して人工的に「冬」の状態を作りながら育てている。だが、大阪の夏は暑すぎて冬芝で乗り切るのはやはり難しい。

 もちろん、長谷川監督も選手も芝生の状態をチームの不調の言い訳にはしていない。しかし日本を代表するクラブ、スタジアムへ成長するためにも早急に芝生問題は解決してもらいたい。【小杉舞】


 ◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大阪教育大を卒業し、14年に大阪本社に入社。1年目の同11月から西日本サッカー担当。担当はG大阪や神戸、広島、J2京都、名古屋など関西圏のクラブ。甲子園球場での売り子時代に培った体力は自信あり。