ガンバ大阪に超優秀な“転校生”がやって来た。今季新加入の17歳、FW中村敬斗。東京都内にあるクラブユース、三菱養和SC出身で、現在高2ながら争奪戦を勝ち抜いたG大阪とプロ契約を果たした。G大阪はこれまで、下部組織出身以外と高校生での“飛び級”のプロ契約はしておらず、中村が初めての例。それだけ期待値が高い。

 各世代別代表を経験する点取り屋。昨年のU-17W杯インド大会で4試合4得点と大活躍したことは記憶に新しい。180センチ、75キロと体格にも恵まれており、何よりゴールへの執着心が強い選手だ。

 4日、沖縄・南城市でG大阪の2次キャンプがスタートした。レビークルピ新監督が就任後、初めて戦術を交えた実戦形式が行われた。雨が降り、南国と思えないほど冷え込んだ練習場で存在感を見せたのが中村だった。4-3-2-1のシステムでサブ組の1・5列目に入ると、主力組相手にゴール遠目からいきなり豪快なシュートを披露。ハリルジャパン常連のGK東口からゴールを奪った。

 「敬斗! 敬斗!」と周囲の先輩がパスを求めても、自らゴールに向かっていく姿勢はいかにもストライカーらしい。実戦デビューとなった5日、J2京都との練習試合ではサブ組で出場するものの何度も仕掛けてシュートを放つ場面が目立った。得点こそならなかったが、試合後は「前を向いて仕掛けられて自分の持ち味が出せた。いつも通りの平常心を保ってできた。スピードは(相手と)遜色なかったと思う」と堂々と話した。

 そもそも、複数のJクラブから獲得オファーがあった中、G大阪をなぜ選んだのか。中村は冷静に答えた。

 「レビークルピ監督というのが大きかった。僕自身、型にはまったサッカーをするのが好きじゃない。いろんなアイデアを出しながら、人があまり考えないようなプレーで(DFを)抜いたりするのが好き。ブラジル人監督ってそういうプレースタイル好きじゃないですか。だからドンドン好きなプレーを出せるし(自身を)生かせてもらえる監督だと思った。すごく信頼の置ける監督。早くフィットしたい」

 甘いマスクでしっかりとした受け答えができる好青年。だが、自信満々なだけではない。プロ入りして一番驚いたのは「今野さん」だという。「紅白戦とかミニゲームで対戦したら、キープすらできない。速いし、強いし、全然突破できない」。「でも…」と続け「これがA代表では当たり前。世界レベルで戦うには絶対に突破しなきゃいけない。だから、すごくいい練習、経験になっている。自分の中で基準ができた」とうれしそうに言った。

 サブ組が出場した8日の練習試合J3琉球戦では2ゴールを挙げ、さらにオウンゴールも誘発。計3得点に絡む活躍だった。“初得点”はペナルティーエリア外から左足の強烈シュート。「あの位置だと遠いとは感じなかった」とキッパリと話した。まず目指すのは開幕ベンチ入り。収穫、課題、目標、沖縄では多くのお土産を得た。「もう大阪に戻ったら『あー、帰ってきたな』と思うようになりました」と笑顔で話す17歳にとって、充実の初めてのキャンプとなったことだろう。【小杉舞】

 

 ◆中村敬斗(なかむら・けいと)2000年(平12)7月28日、千葉・我孫子市生まれ。三菱養和ユースから高2でプロ契約。G大阪下部組織出身以外の飛び級のプロ入りは初めて。各世代別代表に選出。180センチ、75キロ。


 ◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大阪教育大を卒業し、14年に大阪本社に入社。1年目の同11月から西日本サッカー担当。担当はG大阪や神戸、広島、名古屋、J2京都など。

J3琉球との練習試合でオウンゴールを誘発したG大阪FW中村(中央)(2018年2月8日撮影)
J3琉球との練習試合でオウンゴールを誘発したG大阪FW中村(中央)(2018年2月8日撮影)