全国高校サッカー選手権が12月30日、都内で開幕した。順調に大会は進み、4強が出そろった。準決勝は12日、埼玉スタジアムで行われる。

静岡県からは浜松開誠館が初出場。2日に行われた初戦の2回戦、長崎総合科学大付に0-1で敗れ、全国初勝利とはならなかった。ロングボール主体の相手攻撃に対し、巧みに対応。最終ラインと中盤のスペースを圧縮し、セカンドボールの奪い合いで優位に立った。U-18日本代表で、J1湘南への今季入団するMF鈴木冬一(といち、3年)に対しても、利き足の左足を封じるようにプレスを掛け、決定的な仕事をさせなかった。だが後半23分、マークがあいまいになった隙を突かれ、クロスから決勝点を献上した。

静岡県代表は4年連続で初戦敗退。ワースト記録を更新する結果となった。青嶋文明監督(50)は敗戦の責任を一身に負った。「全て私の責任。(県大会優勝後の)40日間で子どもたちの成長がみてとれた」と、選手をねぎらった。自身は清水商(現清水桜が丘)2年時に全国選手権優勝を経験。当時と比較して「結果を出さなければ、選手は集まらない。魅力ある地域、チームをつくらないといけない」と危機感をあらわにした。

静岡は長らく「サッカー王国」と呼ばれてきたが、近年は初戦突破が大きな壁となっている。優勝も95年(平7)に静岡学園が、鹿児島実との両校優勝を果たして以来、23年間遠ざかっている。

だが、県サッカーのレベルは依然高いままだ。全国選手権の出場校は、毎年のように異なるチームが出場。連続出場は07、08年の藤枝東までさかのぼる。さらに昨年12月には、創部29年目の富士市立がプリンスリーグ東海へ初昇格。来季のリーグ戦は、10チーム中7チームを県勢が占める。全国を狙える有力校がひしめき、「戦力が分散している」との声を多く耳にする。だが、それぞれのチームは確固たるスタイルを持っており、個性豊かな選手を生みだし続けている。選手たちのサッカー人生が今後も続くことを考えれば、選択肢の多さは決してマイナスなことばかりではないはずだ。さらに多くの強豪校は、自前の芝グラウンドで練習を積んでおり、環境面でも全国トップクラスを誇っている。

それでも『全国で勝ってほしい』というのが、自分を含めた県民の願いであることは事実。青嶋監督は「相手の守備を破る攻撃力を身に付け、(全国に)戻ってきたい」。無得点に終わった借りを返すべく、1年間チームを鍛える。【古地真隆】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆古地真隆(こち・まさたか)1993年10月14日、静岡県沼津市生まれ。昨年2月、静岡支局員として入社。J3沼津、アマチュアサッカーを担当。スポーツ歴はサッカー、野球。

長崎総合科学大付対浜松開誠館 試合開始前、笑顔で握手する長崎総合科学大付の小嶺監督(左)と浜松開誠館の青嶋監督
長崎総合科学大付対浜松開誠館 試合開始前、笑顔で握手する長崎総合科学大付の小嶺監督(左)と浜松開誠館の青嶋監督