Jリーグの観戦スタイルが変わったことで、北海道コンサドーレ札幌のホーム戦では他会場ではあまり見られない珍しい光景が広がっている。

試合中、スタンドから笑いが起きるのだ。観客が思わず笑ってしまうのは、会場に響くミハイロ・ペトロビッチ監督(62)の指示の声。テクニカルエリアの破線ギリギリに立って90分間コーチングする熱心な姿は、これまでと変わらない。だが、歌ったり手拍子が禁止されたことで、スタンドにもその声が届くようになった。

これまで札幌はホームで2試合を消化。そのうち特に盛り上がったのは指揮官がDF進藤亮佑(24)の名前を呼ぶ場面だった。ちょっと怒った口調で「シンドー!」と何度も叫ぶ。するとスタンドから笑い声が漏れた。もともと進藤はチーム内ではムードメーカーで、サポーターにとってもいじられ愛されキャラとして人気が高い。サポーター心理としては「ミシャに怒られている。頑張って」という感情なのだろうか。

この現象、本人たちも気づいている。ペトロビッチ監督は「なんで笑ったのかわからないけど、笑いが起こっていたのは聞いていた。だから何回か進藤の名前を呼んでもう1回笑ってもらおうかなと思って叫んだ。そしたらまた笑いが起こった。見てる方はそういうものを含めて楽しんでくれているようなので、それはそれで良かった」と笑い飛ばす。試合後、進藤にも「私が進藤の名前を呼ぶと会場が盛り上がって楽しいな」と伝えたという。進藤は「あれはミシャのパフォーマンス。決して僕のプレーの出来が悪かったわけではないので!」と弁明。このやりとりにも、ほっこりさせてもらった。

もしかしたらサポーターの中には試合中に笑いが起きることに疑問を持つ人もいるかもしれない。でも、新たな観戦スタイルの1つとして、そういう楽しみ方をする人がいてもいいのではないか。ちなみに同監督が選手の名前を叫ぶ時は、たいていオフザボールの動きを指示することが多い。その声が聞けることで会場で取材する記者も、勉強させてもらっている。【保坂果那】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)