J2アルビレックス新潟のOBの持つ「力」を感じる。11月16日、元GKで現在は営業部に所属する野沢洋輔氏が、新潟市秋葉区のスーパーで「アルビ米コラボ弁当」の店頭販売イベントを行った。

平日にもかかわらず多くのファンが列をつくり、200個用意された弁当は飛ぶように勢いで売れていった。客層は大半が女性。野沢氏の大きな瞳、大きな手にひきつけられるように“守備範囲”に誘い込まれると、目をハートにさせながら買い物カゴに次々と弁当を入れていった。「野沢さん、引退しても、すげ~人気だなあ~」。

人気の秘訣(ひけつ)はそれだけではない。さすが元守護神。視野の広さは抜群で、イベントスタッフの後方を歩く一般客の動線確保や気配りが半端ない。おまけにスーツの内ポケットには油性ペンを持参。サインに快く応じるのだ。「何と!」。

野沢さんがビッグスワンでプレーした当時、「わざの野沢」という横断幕があった気がする。サッカーシューズから革靴に履き替えた今、活躍の場は変わっても「わざ」の引き出しは増え続けている。現在は企業とクラブをつなぐ懸け橋として、今日も県内各地を走り回っている。

18日には元DFで、現在クラブのアカデミーダイレクターを務める内田潤氏が新潟市の小学校に招かれ、6年生対象の学習で講師を務めた。講義は約30分。夢を実現させるために必要なことや、地元・新潟で活躍することの魅力を質問形式で発信した。「少し冷たく感じる人もいるかもしれないが、『夢は必ずかなう』とは限らない。人生はどのタイミングで、何が起きるかわからない。どんなことも受け入れ、やって見ることが大切だよ」。自らの経験をベースに話す内容はど直球だったが、語りかける姿勢には「愛」がたっぷりと詰まっていた。

現役時代は左右のサイドバックやボランチなど複数のポジションでプレー。講義でもそのユーティリティー性を発揮し、児童の表情をくみ取って言葉やジェスチャーを柔軟に変えた。「理解してくれないと意味がなくなってしまう。『学ぼう』という姿勢がすごく良かった。(30分では)足りなかったぐらい」と、笑顔で振り返った。

その他にもクラブは寺川能人氏が強化部長、本間勲氏が強化部スカウト担当を務めるなど、クラブをよく知るOBが立場を変えて戻り、新たな歴史を作るきっかけをつくろうとしている。J1昇格は選手もサポーターも誰もが望むことだろうが、10年先、50年先もチームが地元から応援されつづけるためには、クラブOBの活躍も欠かせないことだろう。【小林忠】

◆小林忠(こばやし・ただし) 1985年(昭60)6月26日、新潟県阿賀野市(水原町)生まれ。水原サッカー少年団で競技を始め、北越高2年時に全国高校選手権出場。保育教諭として地元のこども園に12年半勤務した後、19年途中に入社。20年からJ2新潟担当。

イベント中でもファンからのサインに応じる野沢氏(2021年11月16日撮影)
イベント中でもファンからのサインに応じる野沢氏(2021年11月16日撮影)
児童からの質問に答える内田アカデミーダイレクター(2021年11月18日撮影)
児童からの質問に答える内田アカデミーダイレクター(2021年11月18日撮影)