「昨年(度大会)は予想以上の結果が得られた。プレッシャーがあったと思う。でも、そのプレッシャーは幸せなこと」。昨年末、全国高校サッカー選手権の初戦、富山第一戦で勝利した直後に、高川学園(山口)の江本孝監督(38)は、そう話していた。
「トルメンタ」
「グルグル円陣」
そんな“必殺技”とともに、高川学園が全国の舞台を席巻したのは1年前。セットプレー時に円陣を作って回転しながら動く戦術は、日本だけでなく海外からも注目された。話題を集めただけでなく4強と躍進。その分、今年のチームはさまざまな「プレッシャー」を感じていたはずだ。
昨年3月に行われた中国地区の新人戦。トルメンタを作ろうとすると、相手が間に入り、手をつながせてくれなかった。そんな“包囲網”を乗り越えての全国大会出場。初戦で先制ゴールを挙げたMF実森大翔(3年)は「先輩たちはトルメンタで何点も取っていたけど、僕たちは決めたことがなくて」と話していた。心のどこかにある重圧と、真正面から向き合っているようだった。
先輩たちの色を引き継ぎながら、自分たちの色を出す。ニアサイドでグルグル回る「ニアメンタ」。初戦では、トルメンタではない新たな戦術も披露。左コーナーキック時に、ゴールエリア内でキッカーの方を向いた5人が一列に並んでしゃがみこんだ。キックと同時に右端の1人がくるりと後ろへ走り込むと、他の4人はその場で立ち上がる。1週間前に選手間の話し合いから生まれたものだった。「ニアでやったら相手の守備がいやがるんじゃない?」「(しゃがむと)何をするんだろうって疑問に思うんじゃないか」。アイデア力と柔軟性は、伝統として受け継がれている。
個性的な戦術が目をひくが、それはしっかりとした基礎技術があってのもの。「夏も毎日2部練習をして、つらい思いをどこよりもしてきたと思っている。負けられないという気持ちが勝利につながると思っている」。実森はきっぱりと言い切っていた。セットプレーの練習は、日々のトレーニングが終わった後。毎日、30~45分を費やしてきた。
今年は準優勝の東山(京都)に敗れ3回戦敗退。先輩たちの結果は超えられなかった。トルメンタでゴールを奪うこともできなかった。それでも、計り知れないプレッシャーを乗り越えた経験は唯一無二のもの。幸せなことだと、誇れる日が来るはずだ。【磯綾乃】




