<高校サッカー:四日市中央工6-1尚志>◇7日◇準決勝◇国立

 自分の地元には負けられない。市船橋(千葉)が大分を下し7大会ぶり、四日市中央工(三重)は尚志(福島)を下し20大会ぶりの決勝に駒を進めた。市船橋の2点目を決めたFW和泉竜司主将(3年)は三重県四日市出身。四日市中央工の先制点を決めたMF国吉祐介主将(3年)は、逆に千葉県出身。90回の歴史で初の対戦となる名門校同士の決勝(9日、国立)は、期せずして「敵地出身主将対決」となった。

 MF国吉主将の先制ゴールが大量6得点の号砲となった。前半35分、「ここぞという時に使おうと思っていた」サインプレーの封印を主将の指示で解いた。左CKをMF田村大がゴールライン沿いに低いボールを蹴り、ニアでFW浅野が45度の角度にはたく。走り込んだ国吉がダイレクトで右足を振り抜き、豪快にネットに突き刺さった。その後も、国吉の攻守にわたるゲームコントロールで、大会通算18得点の攻撃力を国立の舞台で見せた。

 1年で成長した。新チームになったときの全員ミーティングで、樋口監督から主将に指名され、エース番号「17」をおくられた。20年前の初優勝時に、元日本代表FW小倉隆史氏がつけていた番号。それ以降、代々FWが受け継いできた。「最初はボランチの僕がなぜ?

 と思い、重圧もありましたが、点をとることだけでなく、仲間の先頭に立って引っ張ることが役目。精神的には強くなれたと思う」と胸を張った。

 中学時代に所属したクラブチームと四日市中央工が定期的に交流していたことがきっかけで、千葉からサッカー留学の道を選んだ。最初はホームシックで涙する日々。「つらい時もあったけど、仲間とともに歩んできた3年間は本当に楽しかった」。スタンドで見守る父元博さん(49)も「ひ弱だったのに三重で温かく成長させてもらいました」と頼もしい息子の姿に涙を浮かべた。

 後半16分に今大会2枚目の警告を受け、決勝のピッチには立てなくなった。試合後のロッカールームでは3年生DF西脇に黄色のキャプテンマークを託した。「千葉の友達も活躍を見てくれたと思う。決勝の相手がイチフナというのも感慨深い。優勝します」。決勝は応援席から、支えてくれた仲間を信じる。【鎌田直秀】