時は来た。90回の節目となる高校サッカーは9大会ぶり5度目の優勝を狙う市船橋(千葉)と、20大会ぶり2度目の優勝を狙う四日市中央工(三重)の名門同士の決勝戦(9日、国立)となった。市船橋が玉座を守るがごとくの堅固さを特色とするのに対し、四日市中央工は2年生2トップを軸に、三重県にルーツをもつ伊賀忍法のごとく多彩な攻めが持ち味。優勝旗を懸け、両チームがそれぞれのスタイルをぶつけた激しい決勝戦になる。

 試合の鍵を握るのはどちらも2年生コンビだ。市船橋はセンターバックのDF種岡岐将、小出悠太が相手の攻撃をはね返す。四日市中央工は得点王争いで並ぶFW浅野拓磨、MF田村翔太がスピードに乗った多彩な攻撃でゴールを狙う。

 市船橋の2人は昨年末のリベンジを果たす機会となる。四日市中央工との練習試合では2-1で勝利も浅野に得点を奪われた。同じ2年生にやられたことで悔しさが残った。種岡は「絶対に負けたくない。浅野のドリブルを注意する」と話せば、小出も「速さに警戒しないと」。ボランチの中央に入る松丸が「最初の守備でスピードに乗せない」と中央で勢いをそぎ、2人の後輩をサポートする。

 四日市中央工は前日練習のほとんどを攻撃の確認に費やした。浅野と田村翔が同じ位置からばらばらに進む。パスを受けるとゴールへ迫る。正面突破するかと思いきや、サイドからえぐるなど、伊賀忍者を連想させる多彩な動き。連動するようにサイドバックも攻め上がっていた。

 浅野は「スピードでは負けない」と幼少期より培ったドリブルで切り裂くつもりだ。田村翔も「1タッチで振り切る」と相手に捕まらずに突破を狙う。伊賀出身のDF藤山は「2トップは忍者のようです」と仲間を分析していた。6点で得点ランク首位に並ぶ2人。「単独で(得点王を)取りたい」と同じ考えだった。

 90回の節目の大会は、優勝を目指して堅守と多彩な攻めがぶつかり合う名勝負になる。【加納慎也】

 ◆伊賀忍者

 三重県伊賀地方で自衛手段から発達したという忍術「伊賀流」の使い手。普段は農業などに従事しながらも、主従関係を結ぶ主君からの指令が下ると情報活動、破壊活動などにも携わった。発祥は鎌倉から室町時代とされる。特に火薬玉を使うなどの「火術」を得意とした。