なでしこジャパン(FIFAランク6位)がアジア大会決勝でB組1位の中国(同17位)を1-0で破り、2大会、8年ぶり2度目の優勝を飾った。

奇跡の勝利だ。後半45分、ゴール前の右クロスをFW菅沢優衣香(浦和=27)が頭で決めて決勝点をあげた。

4月のアジア杯で3-1と退けた中国だが、その後、監督交代するなど強化に力を入れてきた。この日の決勝も厳しい戦いになった。

激しい雨の中、前半は中国の猛攻にあった。0-0で終わったものの、シュート数は中国8本に対して、日本はわずか2本。後半も流れをつかめない。GK山下杏也加(日テレ=22)が必死のセーブで失点を防いだ。延長かと思われた後半40分、菅沢の決勝ゴールがうまれた。

耐えに耐えてつかんだアジア女王の座。チームワークの成果でもあった。

選手同士が笑顔で交わす「帰りたい~」の言葉。そんな自然なやりとりで結束を強固にしながら、決勝までの5試合を勝ち抜いた。今大会はインドネシアの首都ジャカルタから、飛行機で海を渡り、約1時間かかるスマトラ島の南の都市パレンバンで開催。「ジャカバリン・スポーツシティ」という広大な土地に、スタジアムや、テニスなど他競技の会場、選手村などがあった。国際大会では周辺の観光や日本食などを食べてリフレッシュすることもあるが、今回はバスのチャーターの都合や、食事の安全性も考慮し、選手はシティ内での行動に限定された。

多くが苦しんだのが食事面。日本食が恋しく、準々決勝の北朝鮮戦前には「早く帰りたいけれど、ここで帰るのは嫌だよね」と誓い合ったという。4強入りを決め、残り2戦を戦うことが決定(準決勝で敗れても3位決定戦があり)すると、FW岩渕は取材エリアで「勝った状態で『帰りたい~』って言っているぐらいなんで。これを機に(雰囲気が)上がってきたと思います」と笑わせた。

決勝前日の30日も、高倉監督は「疲労を心配していたけれど、表情を見る限りはそんなことを感じない雰囲気」と選手の状態を分析。岩渕が「いつも通り。緊張している選手はいない」と言ったのも象徴的だ。DF鮫島は「選手同士のコミュニケーションがすごく増えて、考える力が身についた」と高倉ジャパンになっての変化を語る。本職がサイドバックの鮫島とDF有吉がそれぞれセンターバック、ボランチを務めたが、周囲とのコミュニケーションを密にし、要所でピンチの芽をつんだ。

故障者や海外組の不在で、結果的には国内クラブでプレーする18人で戦った今大会。1戦1戦を時に圧倒し、時に耐え抜いて、指揮官が「まずはここにいる18人で何かをつかみたい」と見据えた2大会ぶりの金メダルにたどり着いた。19年W杯フランス大会へのチームの底上げを証明し、待ちに待った日本への帰路につく。