13年の前回大会MVPのMF山口蛍(24=J2C大阪)が、代表初ゴールを決めた。0-1の前半39分、FW倉田秋(26=G大阪)のパスを受けてゴール左上に突き刺さした。所属先C大阪を6月に退団した元ウルグアイ代表で10年W杯南アフリカ大会得点王のフォルランからシュートの極意を学んできた。昨年のW杯ブラジル大会も経験し、唯一J2から選出された24歳にさらなる飛躍が求められる。

 目の覚めるような1発だった。1点を追う前半39分、山口がミドルシュートを決めた。左サイドの倉田からのパスを受けて、ゴール中央約21メートルの地点から思いきり右足を振り抜いた。ゴール左上にズドンと突き刺さる完璧なコース。代表19試合目の出場で初得点を挙げた。

 「代表では(得点を)取ったことがなかったので狙っていた。監督にも『お前の仕事としてシュートを狙え』と言われていた。C大阪時代に一緒にやったことがある秋君(倉田)がよく見ていてくれた。(一方で)優勝するには勝ちが必要だったので、あまり素直に喜べない」

 唯一J2から選出された男は、この1年はタフに戦うことに決めていた。「体は丈夫な方。自分は精いっぱいやるだけ」。代表で臨んだ3月31日ウズベキスタン戦を終えた深夜、所属のC大阪へ合流。翌4月1日の千葉戦にフル出場を果たした。J2ならではの強行日程にも耐えた。

 元ウルグアイ代表でC大阪で同僚だったフォルランから知識と経験を吸収した。「彼のシュートはすごい。間近で見るだけで勉強になる」。この日のシュートもまるでフォルランの技術が乗り移ったかのようだった。6月、戦友が退団する際に交換したユニホームは、それぞれ代表のものだった。日本を背負うという覚悟の表れだった。

 前回13年大会は、3発の柿谷を抑えて、MVPを獲得した。14年W杯ブラジル大会では主力の座をつかみ、全3試合に出場した。しかし、ハリルジャパン公式戦初勝利を懸けたライバルとの試合では、勝利をもたらすことができなかった。「相手がものすごく強かった。自分はまだ、周囲の期待に応えるプレーはしていない。次に切り替えたい」。日本に明るい光をともすため、蛍の輝きがより一層必要となる。【小杉舞】

 ◆山口蛍(やまぐち・ほたる)1990年(平2)10月6日、三重県名張市生まれ。男手ひとつで育てた父憲一さんの影響で小3からサッカーを始め、C大阪ジュニアユース、同ユースを経て09年にトップ昇格。12年ロンドン五輪で4強進出。前回13年東アジア杯でA代表デビューしMVP。14年W杯ブラジル大会メンバー。173センチ、72キロ。