日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(63)が、負の歴史に名を刻んだ。男子代表(FIFAランク56位)は中国(同79位)と引き分け、大会史上初の最下位が確定。MF武藤の出場2戦連発となる同点弾が精いっぱいだった。通算2分け1敗。戦術を変えても、選手に歩み寄っても機能せず、2連覇どころか、初めて1勝も挙げられない監督になった。9月再開のW杯ロシア大会アジア2次予選へ不安の残る采配を露呈した。

 横殴りの雨も、その身にかかる汚名をそそいでくれなかった。ハリルホジッチ監督は白髪をぬらし、指揮者のように腕を振ったが調律できない。史上初の最下位。1度も勝てなかった。客席では、この試合が引き分けなら優勝の韓国が大騒ぎしていた。東アジアの最弱国に成り下がった。それでも、試合後のロッカールームで発した言葉は「おめでとう。今日のような試合を続けていこう」だった。

 「奇策」で失点した。初出場の2人を不慣れな位置で起用。右サイドバック(SB)に本来センターバックの丹羽、左SBに本職が右の米倉を置いたが、開始10分で先制された。いつもの癖か丹羽が中央に寄りすぎ、空いた右サイドをFW武磊に突かれた。今大会は無失点も1度もなかった。

 ハリル株が急落した大会になった。端緒は2日の初戦。FIFAランク129位の北朝鮮に逆転負けした試合のハーフタイムが始まりだった。体調が整わない中、1点リードで帰ってきた選手を「なぜ走らない。裏を狙え。もっと縦に速くだ」と責めた。響く怒号。試合前は「疲労がたまっている」と過密日程を言い訳にしながら、自分は動けない選手を見極められず酷使した。結局、後半もワンタッチプレーで縦に急がせて消耗。必然の自滅だった。

 続く韓国戦で理想を捨てた。かつて「世界最強の国にだって勝ちに行く」と豪語した男が守備を固め「恥ずかしさもあるがリアリスト(現実主義者)にならないと」。一方で守備ラインの統率は「選手が判断しろ」と丸投げし、翌朝、ボヌベー・コーチを使って選手の意見をうかがった。上から目線で日本人にダメ出ししてきた指揮官が歩み寄った。危機感の表れだった。

 迎えた中国戦で意地の1勝を狙ったが、公式戦の連続勝ちなしが「4」に伸びただけだった。掘り当てた選手は2発の武藤や3試合フル出場の遠藤、山口ら少数。「真のA代表が2、3人いた」と満足そうだった一方で「Bチームとは言わないが、何人かの選手はもっと勉強してほしい。コンニチハ、しか言ったことのない人もいる」。見限った選手には興味がなかった。

 前日は「選手の批判はやめてくれ。私は『言い訳のバヒド』でも何でもいいから」と背負い込んだが、試合内容に自信があったという中国戦後は「言い訳と報じられることに怒りたい」と支離滅裂。「日本サッカーの危機だ」と声高に叫ぶ指揮官が、日本を危機的な成績に導いた。【木下淳】