日本代表FW武藤嘉紀(23=マインツ)が、8日のW杯ロシア大会アジア2次予選のアフガニスタン戦を前に、胸中を激白した。初先発した3日のカンボジア戦では無得点。代表では初のアウェーとなるアフガニスタン戦で364日ぶりの代表ゴールに期待がかかる。今夏の欧州移籍から2カ月。ブンデスリーガで戦う極意を先輩から学び、厳しいアウェー戦も経験した。約1年ぶりの得点で新エースに名乗り出る決意だ。

 絞り込んだ体と端正な顔立ちは、2カ月前と変わらない。しかし、今の武藤からは大きな自信がにじみ出ている。

 武藤 ドイツの生活にはようやく慣れました。この2カ月で感じたのは、走ることと戦うことが、ドイツ人は好きだということ。とにかく走らないといけないし、戦わないといけない。それは日本での、自分の良さでもあるけど、さらに磨きをかけられる。もっともっと自分が成長できるんじゃないかと、あらためて思う。(8月29日の)ハノーバー戦で(移籍後初の)ゴールを決められて、少しは肩の荷が下りた。

 ドイツでの勢いそのまま、3日のカンボジア戦ではスタメン出場した。アギーレ体制から親善試合を除くと初めての先発。ゴールという結果で応えることはできなかったが悲観はしていない。ブンデスリーガでも、試合ごとに反省と修正を繰り返し、リーグ2試合目で初先発し、3試合目で初ゴールと着実にステップアップしてきた自信がある。

 ブンデス開幕前。あらためて最大の武器、スピードと運動量を生かして挑戦しようと再確認した。マインツと隣接するフランクフルトで長谷部と食事をした時だった。「ドイツではパワーが違うから、強くするために筋トレを取り入れようと思う」と打ち明けると、ブンデス歴7年半の先輩に言われた。「体重を増やすのもいいけど、次第に慣れてくる。重い相手にどういうプレーをすればいいか分かっていく。重くするとキレが失われるから、あんまり増やすのはよくない」。

 武藤 パワーが全然違っても、要は当たり方。わざと当たらないやり方をやらないと。かわすことや、当たらないドリブルの仕方を工夫しないといけない。

 ドイツではアウェーならではの経験をした。第2節のボルシアMG戦。劣悪なピッチ環境に驚いた。踏ん張ろうにも芝生ごと横滑り。自分だけかと思ったらチームメートたちも苦戦していた。後半開始からポイントが取り換え式のスパイクに履き替えた。そんなアクシデントも新鮮に感じ、臨機応変に対処する。

 武藤 あれは本当にびっくりした。日本であそこまで滑ることはないけど、あんなに芝生ごとめくれることはない。ドイツ人ですらずるずる滑っていた。アウェーでああいう経験ができたことはよかった。

 人生が変わるゴールを決めたのは1年前の9月9日ベネズエラ戦。当時は海外組として代表でW杯をかけ戦うなんて想像もしていなかった。今は違う。

 武藤 「チームでポジションをとらないと、代表には呼ばない」と(ハリルホジッチ)監督に言われている。代表でもレギュラーを狙わないといけない。まずは結果。目に見える結果を残したい。

 標高約1200メートルと高く、高温で乾いた風が吹く中立地のテヘランで狙う約1年ぶりの代表ゴール。日本のエースに名乗り出る。【取材・構成=栗田成芳】