焼き加減は、聞くまでもなくウエルダン-。日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(63)が代表合宿中に選手の食卓にのぼる肉を、必ずウエルダン(よく火を通したもの)にするよう厳命していることが16日、分かった。日本橋高島屋(東京・日本橋)で23日まで開催中の大東北展に自身が経営する「アルパインローズ」(福島・広野町)を特別出店中の代表シェフ、西芳照氏(53)が、ハリル流の一部をチラリと明かした。

 現在の日本代表の食卓にレアの2文字は存在しない。肉はよく焼け-。これがハリル流だ。代表シェフで、ジーコジャパンから遠征に同行し選手の胃袋をガッチリつかみ絶大な信頼を寄せられている西シェフが、その一端を明かした。

 「監督からはビーフは出してもいいが、必ずウエルダンにしてくれと言われています。(仕えた歴代監督では)初めてですね」

 鮮度には細心の注意を払っているが、焼き加減によっては食中毒のリスクや、消化の面でおなかに負担をかけてしまうことも考えられる。体脂肪率から徹底管理する指揮官のこだわりは焼き加減にも及ぶ。「あとはフレッシュジュースを出してくれと。言われたのはこの2点だけです」。

 代表選手の好みや遠征先の食文化を知り尽くす西シェフだからこその準備も、大事なW杯アジア2次予選を勝ち抜く“隠し味”だ。10月にシリアと中立地オマーンで、11月にはシンガポール、カンボジアと暑い地域でのアウェー戦が続く。秘策は選手の1番人気メニュー、カレーライスの改良だった。「暑いところでは、食欲増進作用のある辛いもので体力が落ちないようにしています。カレーも辛口にして一味唐辛子で味を調整しています」。

 無事終了した9月のイラン遠征から導入。これまで甘口、辛口の2つだったルーを、辛口に一本化。好評で「辛いのが苦手」だというMF香川、DF吉田も辛口にチェンジ。ちなみに、このメニューは、出店中の大東北展のイートインコーナーで「福島野菜の代表カレー(750円)」として味わうこともできる。

 細かな指示を出すハリルホジッチ監督は試合前に必ずうどんを食べているという。うどんが大好きな香川の影響かどうかは不明だが、日本への理解は進んでいるもよう。よく焼くウエルダンで、肝心の代表チーム強化も「ウエルダン(よくやった!)」といきたいところだ。【八反誠】

<過去の代表食事メモ>

 ◆トルシエジャパン 02年W杯日韓大会では拠点とした静岡の高級旅館・葛城北の丸に依頼。指揮官は「ごちそうではなく家庭料理を」「脂ものは避けて」「生ものは駄目」「香辛料などの刺激物はよくない」と協会を通じ細かい注文を付けた。3食とも基本はご飯とみそ汁だった。

 ◆オシムジャパン 選手にたくましさを求めた指揮官は06年初の海外遠征(アジア杯予選サウジアラビア、イエメン戦)にはシェフを帯同しなかった。サウジに到着してすぐホテルの食事を取った。当然、日本食は出なかった。

 ◆ザックジャパン チームの雰囲気を変えたい時に、切り札として外食を許可した。W杯ブラジル大会のアジア最終予選に向けた12年6月の国内合宿中には焼き肉店、14年の本大会中のキャンプ地イトゥではシュラスコ店に選手だけで出掛けている。生ものとアルコールは抜き。

 ◆アギーレジャパン 昨年10月のシンガポール遠征(ブラジル戦)の移動中にはフードコートを利用。経由地の韓国・仁川空港で自由行動となり、FW本田らが一般客に交じって食事をしている。