リオデジャネイロ五輪に出場するU-23(23歳以下)日本代表が、ガーナA代表(FIFAランク38位)に3-0で快勝した。4月に発生した熊本地震の復興支援チャリティーマッチとして実施。同県宇土市出身のDF植田直通(21=鹿島)が、同代表で初めてキャプテンマークを巻き完封に貢献した。明日13日にトゥーロン国際大会(フランス)のメンバーが発表され、21日の初戦でパラグアイと対戦する。

 鳴りやまない「植田コール」が佐賀の空に響いた。植田は試合後、笑顔で場内を1周した。左腕には手倉森監督から「(熊本)県民出身だから」と、託された黄緑色のキャプテンマークが光っていた。

 2-0の前半21分。ペナルティーエリア左外からの直接FKをしっかり頭ではじき、ピンチを脱した。この試合には「熊本と共に がまだそう熊本」の思いを込めた。入場の際に着用したTシャツに熊本弁で記した。がまだそう(頑張ろう)の言葉をピッチで体現。「県民は僕だけだし、キャプテンマークを巻いて勝つことができて良かった」。

 愛する故郷熊本へ、戦う姿勢を届けた。先月16日に最大震度7の本震が発生。翌17日から1泊2日の強行軍で支援物資を持って茨城から駆けつけた。避難所各所を回り、自分に何ができるかが見えた。1週間、避難生活を送っていた父太実男(たみお)さん(53)母俊子さん(52)とは約5分しか会えなかったが、野菜や日用品を渡し「俺にはサッカーしかない。故郷にいい話題を届けられるのはサッカーだけだから」と強く決意を示した。

 この日はその姿を一目見ようと両親や親族、熊本・大津高関係者ら約30人が集合。大津高の仲間は「植田」の応援ボードを掲げてくれた。試合後には両親と再会を果たし「懐かしい顔が力になった」と感謝の思いを伝えた。太実男さんは「直通が頑張ってくれたら、日本のためにも熊本のためにもなる」と目を細めた。

 試合後の控室。植田は全員へ向けて「熊本のためにありがとう」と頭を下げた。「県民を代表してお礼を言いたかった」。指揮官も「いいリーダーシップだった」とうなずいた。後半は頭を9針ほど縫うけがを負い、テーピングをしながら出場した。それでも「慣れている」と動じなかった。ふるさとを、国を背負って戦う男はやはり強かった。【小杉舞】

 ◆ガーナ代表 FIFAランク38位(アフリカでは33位アルジェリア、34位コートジボワールに続き3番目)。W杯は過去3度出場で06年ベスト16、10年ベスト8、14年1次リーグ敗退。アフリカ選手権は4度優勝。愛称「ブラック・スターズ」。