イラク戦での劇的な勝利から一夜明けた7日、サッカー日本代表をまさかのアクシデントが襲った。11日のW杯アジア最終予選のオーストラリア戦で左サイドバックで先発が濃厚だったDF長友佑都(30=インテルミラノ)が、オーストラリアへの出発前に、さいたま市内で行われた練習中にDF槙野と接触。病院で脳振とうと診断され、離脱が決定した。チームは同日夜、成田空港からチャーター機でメルボルンに向けて出発した。

 苦難を乗り越えた先に、また試練が訪れた。練習のミニゲームの途中で長友が顔をゆがめて倒れ込んだ。接触したDF槙野の膝が運悪く、頭部を直撃。練習を途中で早退し、検査のため都内の病院へ向かった。練習場を立ち去る際には自力で歩いて「大丈夫です」と話したが、夜にはチームから離脱することが発表された。脳に異常は見られなかったが、脳振とうだった。

 脳振とうを起こした選手は日本協会の決まりで6段階の回復プログラムを消化しなければならない。そのため、長友はオーストラリア戦には出場できなくなった。日本代表がオーストラリアに出発する前、成田空港で取材に応じた霜田技術委員は「(長友の)意識はしっかりしている。不可抗力で仕方ない。1日でも早く復活して欲しいが、いるメンバーで戦わないといけない」と話した。追加選手の招集はしない。

 日本にとって長友の離脱は大きな痛手となる。最終予選の3試合連続で右サイドバック(SB)で先発したDF酒井宏は累積警告のために出場停止で、W杯出場へ最大のライバルであるオーストラリア戦にはSBの主力2人を欠いて臨まなければならない。両SBは左でイラク戦に先発した酒井高、左が専門の太田のほか、主戦場がセンターバックの槙野らでしのぐことになりそうだ。イラク戦の前には、招集されたFWの宇佐美と武藤がけがのため合流できなかったハリルジャパンが、再び不運に見舞われた。【上田悠太】

 ◆脳振とうからの復帰 国際サッカー連盟(FIFA)が決めた手順を踏まなければならない。(1)活動なし(完全休息)(2)軽い有酸素運動(3)スポーツに関連した運動(ランニングなどのトレーニング)(4)接触プレーのない運動(パス練習など)(5)接触プレーを含む練習(6)競技復帰。日本協会は2月の理事会で今季からFIFAに準じる対応をすると決め、日本代表戦とJリーグの試合で導入した。