ハリルジャパンにUAEから“影武者”が送り込まれた。アルアイン合宿2日目、20日の練習中、ピッチ脇で目を光らせる青年がいた。髪形はアフロ、顔もUAE10番のMFオマル・アブドゥルラフマン(25)にそっくりだ。ここは、オマルが所属する地元クラブ、アルアインの施設。大胆不敵にも本人が敵情視察か? 近づいて「オマルさん?」と聞くと「違いますよ」。では、なぜ同じ顔なのか尋ねると「フフフ」と笑い「私はオマルの弟だ」と明かした。

 アルアインのセカンドチームに所属しているようで、最初は隣接するピッチで練習していた。高精度のロングパスを通すプレースタイルも兄そっくり。終わると、すぐ着替えて代表の練習場に来た。「年は20歳」。そこまで言うと“自称弟”は名乗ることなくピッチを向いた。部外者は立ち入り禁止だが、ここが本拠の彼は追い出されない。視線の先には、攻撃陣のフォーメーションや、香川がボランチに下がって練習する様子、清武と高萩が別メニュー調整する姿があった。隠したいはずの情報が筒抜けになった。

 昨年のアジア年間最優秀選手のオマルを兄に持つなら、戦術眼も確かなはず。日本を丸裸にすると、満足そうに場を離れた。そこを再び直撃し、23日の試合のスコアを予想してもらうと「スリー・ゼロ」と3-0でUAEの勝利。親指を立てて挑発し「コンニチハ」と言って帰っていった。

 この情報は兄に届けられるのか。UAEは今月上旬から自国リーグを中断し、日本連破へ集中合宿を張っている。日本と違い、こちらは完全非公開。情報戦では中東の難敵に洗礼を浴びた形になった。【木下淳】