日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(65)が28日、東京・JFAハウスで行われたメンバー発表会見で日本サッカーに一石を投じた。日本を6大会連続W杯出場へと導いた指揮官は、用意した手書きのデータをもとに約18分の一方的な“猛講義”。FW本田圭佑(31=パチューカ)らを外したメンバー発表は後回しにして、ポゼッション(ボール保持率)を重視する日本のスタイルに疑問を呈し、熱いメッセージを発信した。

 会見はハリルホジッチ監督の独り舞台だった。メンバー発表は後回し。ミーティングで使う戦術ボードの紙をめくり、資料を提示して話し始めた。

 「日本のサッカーの教育はポゼッションをベースに作られているのかなと思う。だが、相手よりボールを持ったからといって勝てるとは限りません」。就任以来、言い続けている持論だけにブレはない。ポゼッションを重視する傾向が強い従来の日本のやり方に物申した。後に明らかになる本田らの落選や、車屋の抜てきもかすむハイテンションだった。

 明け方、欧州チャンピオンズリーグ(CL)1次リーグのパリサンジェルマン-バイエルン・ミュンヘン戦をいつものようにチェック。試合はデュエル(決闘=ボールの奪い合い)以外、ボール保持率もシュート数も下回ったパリが3-0で快勝。わが意を得たりとばかりに“講義”を思い立った。

 協会内の仕事場でフランス紙レキップのデータを自らペンを手に書き出し、資料まで準備。「話をしなきゃいけない」と協会側に訴え出て時間をもらい、一石を投じた。

 指揮官は、まさにこのやり方で8月末にオーストラリアとの大一番を制し、W杯出場を決めた。保持率は日本38・6%に対しオーストラリア61・4%だった。「(サッカーは)不確実な科学。ただ、最終的にサッカーでは結果のみが唯一の真実」。このタイミングでのハリルホジッチ監督の言葉には、説得力がある。「(W杯に向け)違った考え方で準備している選手がいれば、それが間違いだったということになる」とも警告した。

 10月は格下相手の連戦になる。日本の保持率は高まるはずだが、あくまで見据えるのは9カ月後のW杯。コンディション面が理由だが、ポゼッション志向が強く、その象徴ともいえる本田が外れたのも興味深い。ボールは手放しても、勝利は絶対に手放さない負けず嫌いの指揮官の日本サッカーへの大演説。「ロシアへのチケットを確約できる選手は誰一人いない。勝ち取らないと」。ハリル流のやり方で、競争の号砲が鳴った。【八反誠】