【ドルトムント(ドイツ)13日=木下淳】2020年の東京五輪男子サッカー日本代表監督に就任した森保一氏(49)が、欧州で取り組んでいる研修生活の一端を明かした。先月22日の離日から約3週間。ドイツ1部シュツットガルトの練習見学を皮切りに、単身でイングランドやオランダを訪れ、W杯ロシア大会の欧州予選も視察した。52年ぶりのメダル獲得が期待される東京五輪に向けて、本場で国際経験を積んでいる。

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 東京五輪の監督就任発表から一夜明け、森保氏は2日連続でドルトムントの非公開練習を見学した。前夜は07年U-20(20歳以下)W杯でコーチと選手の間柄だったMF香川と再会。深夜も、日本から届く祝福や激励の電話が止まらず「責任の重みを感じますね」と反対に気が引き締まった。

 この日で欧州生活は22日目になる。「放浪の旅というか、その日暮らしというか。できる限り練習と試合を見たくて」。たった1人で、すべて自費で飛行機や鉄道を乗り継ぎ、携帯電話でホテルを予約しては移動する。「先日の宿はシャワーもトイレも共同。屋根裏部屋で寝た日もあった」と笑う顔には充実感が漂う。

 本場の文化や施設に触れるたび、バイタリティーが湧いてくる。先月22日に渡欧し、まず広島時代の教え子の浅野がいるシュツットガルトへ。1週間ほど勉強した後、日本協会の指導者海外研修プログラムで8月末からドイツに派遣されている、同い年の黒崎久志氏(49)と合流。大迫のケルンや宇佐美のデュッセルドルフなど1部も2部も関係なく視察した。「言葉は分からなくても監督の狙いは理解できる。試合から逆算し、どうプロセスを踏んでいくのか」を見たかった。

 今月11日にはシャルケ練習場へ。「おそらくセカンドチームでしたけど、見に行って本当に良かった。激しく厳しく、ビビらず、ひるまず『俺の方が上だ!』ってバチバチの球際の攻防を見せてもらった。誰かが倒れていてもプレーは続くし、この競争を勝ち抜いた選手だからこそ、トップのリーグでやっていけるんだなと。サッカーの原点」と心が動かされた。

 かねて海外研修に興味があった。03年に仙台で現役引退。当時「語学の習得も含めて海外留学を考えた」が、翌04年にすぐ広島の強化部育成コーチに就いた。以来1度も仕事が途切れず、気付けばJ1で3度優勝の名将に。今年7月の広島監督退任後が、初めてといえる空白期間だった。「見識を深めるチャンス」と迷いなく単身で海を渡った。

 そして東京五輪監督のオファーを受けた中、W杯欧州予選のイングランド対スロベニア、オランダ対スウェーデンを観戦し、こう思ったという。「海外にいると、あらためて『日本人』の誇りが強くなる」。より高まった日の丸への思いを胸に。今後は吉田のサウサンプトンでも研修してから帰国し、就任会見に臨む。