【アブダビ8日】2大会ぶり5度目の優勝を目指す日本が9日、アジア杯UAE大会の1次リーグ初戦トルクメニスタン戦を迎える。トップ下での先発が濃厚な森保ジャパンのエース候補、MF南野拓実(23=ザルツブルク)が開幕前にインタビューに応じ、2月1日の決勝まで全7試合のフル回転と優勝を宣言。アンダー世代から経験を積んできたアジアで代表に貢献し、欧州でのステップアップもつかみ取る。チームは非公開で最終調整した。

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初戦の会場で南野が前日練習に臨んだ。気温が29度まで上がった中、W杯ロシア大会の代表だったMF乾と大会公式球や芝の感触を確認。目標は「優勝」だ。守備を固めてくるとみられるトルクメニスタンに対し「強引にでもシュートを打っていきたい」と突破口を開く役割を担う。UAE入り後の練習試合(5日)も2得点と好調で、攻撃陣を引っ張る覚悟がみなぎる。

新エースへ歩みを加速する。「個人よりチーム優先」と話すが、結果が謙遜を許さない。森保ジャパン初陣の昨年9月に約3年ぶりの代表復帰を果たすと、ウルグアイ撃破(4-3)の2発を含むチーム最多4得点。「代表に呼んでもらえれば、やれる自信はあった」から驚きはない。ザルツブルクでも、昨年11月に欧州リーグで日本人初ハットトリックを達成するなど前半戦11得点。こちらも今季の欧州組では最多だ。「ゴールとアシストにこだわる」姿勢を貫けば、日本人初のアジア杯制覇&得点王のダブル戴冠も見えてくる。

過密日程も歓迎だ。トップ下での先発が予想される初戦トルクメニスタン戦から、2月1日の決勝まで24日間で7戦。「全試合に出たい」理由がある。直近の1年半、代表とザルツブルクで計74試合に出場。「常に週2でゲームがある状況は初体験。試合に出続けることでリズムに乗るタイプなので、新たなトレーニングを始めたとか何か意識して変えた、ではなく、自分を取り巻く環境が変わっただけ。けがなく乗り切れたことで成長し、今につながった」とブレークの要因を分析する。今大会も連戦を通して状態を高めていく。

アジアの免疫もある。U-15から、すべての世代別代表を経験。「12、13人が一斉に腹痛で倒れた15歳のフィリピン…最も悲惨な遠征でしたね」。以来、酷暑も荒天も劣悪な食住も怖くない。10年U-16アジア選手権では得点王に輝き、16年U-23選手権で優勝に貢献。一方、主将を務めた14年U-19選手権では準々決勝でPKを外し、U-20W杯を逃した。「アジアは何でも起こり得る。常に最悪の事態を想定しないと」。酸いも甘いも味わった。すべては頂点のA代表で勝つための血肉となっている。

準備が整う中、ともに新時代の象徴となった中島の負傷離脱で、南野が浴びる熱視線も増す。これまでドイツやスペインなど複数国から興味を示されながら移籍がまとまらなかったが、ステップアップの思いは「すごくある。すべての試合で誰かに見られていることを意識しているし、非常に前向き」だ。11年カタール大会で優勝したDF長友がインテルミラノ移籍をつかんだ前例も把握しているが「今は優勝しか考えていない」。そう強調しつつ付け加えた。「優勝をつかむかどうかで自分のサッカー人生は大きく変わる」。アジアNO・1に近づくほど踏み台の反発は強いが「まずは初戦」と踏み外す慢心もない。今日“南野の大会”が幕を開ける。【木下淳】