1次リーグ突破を告げる笛を耳にしても、森保一監督(50)は表情を引き締めたまだった。

先発を2人入れ替えて臨んだオマーン戦。原口のPKによる1点を守りきっての辛勝に、就任後は6勝1分けと無敗記録も7に伸ばしたものの「試合を勝ち切れたことに、まずは結果として良かったという部分で、考えたいと思います。無失点に相手を抑えながら追加点を奪いにいこうということで、選手には話はしていましたし、選手も次の1点を取りにいくというところは考えてくれていたと思います」と喜びは控えめだった。

冷静かつ情熱的に、苦境に立ち向かった。右臀部(でんぶ)痛を再発症させたFW大迫を欠き、底力が試される一戦。指揮官は力んで前がかりになることなく“定位置”から一歩下がった。試合中は「試合中に前に出るのは自然。ほとんど出っぱなしで、選手からしたら『監督引っ込んでおけよ』って感じかも」と苦笑いするほどピッチサイドに張り出すが、この日はベンチ横まで下がって戦況を見守る時間が増えた。原口がPKを決めた瞬間もベンチ横で少しほおを緩めて拍手すると、すぐに表情を引き締めてメモを走らせた。

かと思えば、持ち前の情熱もたぎらせた。後半開始早々にMF堂安、DF冨安が危険なファウルを食らうと、最前線まで飛び出して猛アピール。選手を守るべく、“定位置”まで出てきてにらみをきかせた。エース不在のピンチにもどっしり構え、壁を1つ超えた。

1次リーグ最終戦のウズベキスタン戦を前に突破を決めたが「まだこの大会は終わった訳じゃないですし、次の試合もあるので、これまで通り、次の一戦に向けて準備していきたいと思います」と次戦にクールなまなざしを向けた。優勝まで、残り5試合。「我々はもちろん優勝を目指して戦っていますが、自分たちがこの大会で成長しながら7戦を戦うということ。しっかりと次の1戦に向けて準備したいと思います」。地に足を着け、成長曲線を頂点まで上げていく。【浜本卓也】