サッカー日本代表MF久保建英(18=マジョルカ)は、国際親善試合キリンチャレンジ杯パラグアイ戦に後半から出場し、持ち味の攻撃力で随一の存在感を放った。その一方で守備面では森保一監督から課題を示された。代表の主力に成長していくために、久保が取り組むべきところはどこか、今後について考察した。

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いつになく貪欲な姿だった。久保はどこか急ぐように、次々とゴールを狙っていた。シュートはチーム最多タイ5本。右サイドを縦横無尽に走り回る「久保モード」全開に、会場はどよめいた。ただ、試合後には森保監督から「守備の部分ではまだ強さは足りない」と注文も。久保自身も反省を口にした。

守備を含めた献身の大切さは十分に理解している。昨季は東京でプレスの強度が足りず、出場機会を得られなかった。そこを改善して今季、飛躍した。「サッカーはチームスポーツ。『俺が、俺が』ではいけない。選手の特徴はあっても、コンセプトのところができなければ試合には出られない。それを10代の早い段階で分かったのは大きかった」。久保には成功体験という財産がある。

だが、あえて言いたい。今、久保が注力すべきはあくまで攻撃で違いを見せることにある。協調、献身-。日本の良さであり、お国柄だ。ただその「美意識」を今の久保に当てはめる必要はない。

川崎Fの下部組織で久保を指導した高崎康嗣コーチの言葉を借りれば「久保のスタイルはバルセロナで形成されたもの」。バルセロナ下部組織時代には1シーズン30試合で74得点という破格の数字を残したこともある。南米選手権では1人でチリ代表のDFラインをドリブルで切り裂き、バルセロナMFビダルのスライディングもさっそうとかわした。逆輸入と言っていい18歳には、明らかに突き抜けた「個」がある。

連動性を重視するなら、右サイドはMF堂安が適任だ。MF南野、中島、FW大迫の4人はアジア杯などを含めて1年以上、連係を成熟させてきた。今の時点で久保が守備に走るようになったとしても、序列は覆らない。逆に4人の信頼できる攻撃のパッケージがある今なら、最年少が見せる個は「オプション」となれる。チームは崩れない。

突出した個性という“異質”が認められるには、結果しかない。A代表デビューから5試合をこなした。強豪国との対戦もあったものの、得点はまだない。堂安と南野は3試合目、中島はデビュー戦でそれぞれ初ゴール。久保と同じく10代でA代表の舞台に立ったMF香川は4試合目で得点を記録した。期待がかかる史上最年少ゴールも、実はもう決して早くはない。

森保ジャパンは22年W杯カタール大会への旅路に出た。初戦の敵地ミャンマーは荒れたピッチ、悪天候も予想される。相手は引いて守る可能性が高い。そうして閉ざされたゴールを自らの足でこじ開けることがミッションだ。まだ18歳、粗削りでいい。まとまることなく異質を貫くだけの技術とアイデアが、久保にはある。【岡崎悠利】