<ワールドカップ(W杯)アジア2次予選:日本2-0キルギス>◇F組◇14日◇ドレン・オムルザム

今年のW杯予選で日本は4戦全完封勝利という最高の結果で締めた。4試合中3試合は敵地。格下相手とはいえ取りこぼさずに勝ち点3を得るのは容易ではない。FIFAランクアジア最上位27位のイランやUAEが2連敗するなど苦しむ中、好結果を生んだ背景には、森保一監督(51)の先見の明があったと見る。

キルギス戦のメンバー編成からも、それは見て取れた。この2週間にA代表2試合と東京五輪世代の1試合を指揮することが決まった時点で、懐に温めていた「ウルトラC」を選択肢に入れた。「今回は2・5チームとして考えるのは選択肢としてありかなと思っていました」。選手層アップはもちろん「選手に勝負できるコンディション作りをし、自チームで活躍してもらうことが日本サッカーの未来につながる」という持論も揺るがなかった。その境界で考えたのが、一部の欧州組を1試合で返す異例のメンバー編成だった。

実体験が下地にあったから決断できた。17年7月に広島の監督退任後「できる限り練習と試合を見たい」と単身で欧州に渡った。自腹で約1カ月間交通手段や宿泊先を予約し、各地のサッカーに触れて見聞を広めた。当時訪問を受けた吉田は「代表じゃない時に欧州のサッカーをしっかり見ているからこそ、そういう判断ができるんじゃないかなと感じている。貪欲な姿勢はプラスに働くんだと今回感じました」と敬服した。

指揮官は「選手とチームの成長を考えてこの選択になったのは自然」と言う。周囲には異例と受け取れる「2・5チーム」計画を早期に決断したからこそ、DF吉田ら出場を続ける主軸をこの試合で戻し、ベネズエラ戦では新戦力4人の招集を可能にした。

先見の明は、金メダルを目指す五輪世代にも見て取れる。今回はA代表のMF堂安、MF久保、DF板倉をU-22に専念させた。堂安は南野、中島とともに中盤の「三銃士」を形成する主軸だが、10月10日のW杯予選モンゴル戦はMF伊東を先発に据えた。その試合で伊東は3アシスト。「先を見据えてというのももちろんありますけど理由は1つじゃない。結果を出している選手をどう起用するか、層を厚くするために2次予選をどう戦っていくか、今後に力を蓄えるために必要なところはやっていかなければいけないなと思いました」。伊東を先発で起用できるめどを立てられたからこそ、今回で堂安を五輪代表と融合させる編成を決断できたのではないか。

指揮官の目線軸は、遠近両方で発揮される。キルギス戦では3日間の練習で「動きがすごく良かった」と抜てきしたMF原口が追加点を挙げた。遠くの未来と近未来の両方をにらみながら手にした、W杯予選の開幕4連勝。笑顔で謙遜しながら「先見の明? 行き当たりばったりです」と発した言葉を、うのみにはできない。【浜本卓也】