日本代表のある日常が戻ってきた。新型コロナウイルスの影響で史上初のオール欧州組でチームを編成した森保ジャパンの今年初戦となったカメルーン戦はスコアレスドローに終わった。森保一監督(52)は後半から3バックにシステムを変更するなど、強気に勝利を求めた。13日のコートジボワール戦(FIFAランク60位)で、今度こそ20年初得点と初勝利を届ける。

   ◇   ◇   ◇

画面越しでも、森保監督の高揚感は伝わった。試合後のオンライン会見。引き分けた現実を正面から受け止めたうえで、コロナ禍で試合に臨んだ選手の姿に触れた。「球際で勇気を持って勇敢に、積極的な姿勢をもって戦うことと粘り強く対応していく部分を勝つために表現してくれた」と、言葉に力を込めた。

約10カ月ぶりの代表戦。準備期間の短さもあり、不安視された連係不足もあった。そんな中で、指揮官が思いきりタクトを振った。後半から4バックを3バックに変更。準備期間は前日練習のみ。「選手たちは戦術に厚みをもたらすために必要と前向きにやってくれていたのでトライした」。選手を信じ、強気の采配で攻守にリズムを生んだ。

強気の源泉は、新型コロナの自粛生活にあった。「うずうずしますよ」と本音が漏れた時もあったが、あらゆるものから自分磨きのヒントを探った。プロ野球・巨人の原辰徳監督の書籍から「うまい選手はいらない。強い選手が必要」との言葉に目指すべき指針を見つけた。陸上のリレー競技やスピードスケートの女子チームパシュートのドキュメントには、個の力を上げながら組織力で世界と戦う姿にくぎ付けになった。「異業種の方々の考え方、立ち居振る舞いは勉強になり、刺激になりました。世の中にはすごい人たちがいますね」。

自問自答も繰り返した。世界中が新型ウイルスに苦しむ中、サッカーは必要なのか-。自分の存在意義は何なのか-。「それは自分が決めることでも決められることでもない。これまでも1試合終わった時に終わることになっても後悔がないようにやってきている。自然体でいろんなことを受け止めていきたい」。少年時代から「人のために何かしてあげていた」という両親の姿を追いかけてきた。「自分もそういう人間になりたいと思ってきました」。全身全霊で日本代表を率いることが人々の喜びになれば-。十分すぎる存在意義をかみしめた。

会見の最後。「話は長くなりますが」と前置きし、続けた。「収束しない新型コロナの問題の中でも、復興までは遠い道のりである自然災害の中でも(日本の人々のために)試合を通して粘り強く戦っていこうと話していた。選手たちが表現してくれた」。最後まで諦めず、粘り強く-。信念を貫き、次戦こそ勝利も届ける。【浜本卓也】