<国際親善試合:日本0-0カメルーン>◇9日◇ユトレヒト

サッカー日本代表(FIFAランク28位)は9日、オランダ・ユトレヒトで行われた国際親善試合でカメルーン(同53位)に0-0と引き分けた。

コロナ禍の影響で296日ぶりの国際Aマッチ。期待された久保建英(19=ビリャレアル)は存在感を見せたものの、得点は奪えなかった。サッカー担当記者が独自の視点で日本代表を掘り下げる「Nikkan eye」では後半45分のプレーに注目。ゴール、勝利のため、もっとエゴをむき出しにすることを提言した。

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強烈な直接FKを放つ直前の、意外なプレーが印象に残った。後半45分。久保がボールを持った。ペナルティーエリアのやや右。縦にいくか、中へ切り込むか。試合終了が迫る中、相手ゴール前をかき回しにいく姿を想像した。しかし、そこで選んだのはパス。DFの背後からMF中山が走るのに合わせ、右サイド深く空いたところに出したがつながらず。久保は天を仰ぎ、中山に謝るように手を挙げた。

19歳らしからぬ冷静さと聡明(そうめい)さを持つ。互いに攻め合う展開になっていたため「スペースで受けて運べたら」と、戦況を見定め、ピッチに入っていた。中山へパスしたシーンも、ボールウオッチャー気味になっていた相手のスキを突こうとしたもの。ゴールから逆算して最も得点の確率が高いとみた選択だったはずだ。

それはわかった上で、あえて提言したい。あの場面では、途中出場でチームにインパクトを与える意味でも、得意のドリブルという強烈な個性を貫いてもよかったと。森保監督は連係・連動を軸にしているものの、準備期間が短い代表では、ここぞの場面で個の力が求められる。久々の試合でチーム全体に連係不足が出ていたからこそ、もっと強引さがあっても良かったのではないか。

先発したMF堂安ら、右サイドでは激しいポジション争いがある。久保が序列を覆すには、ライバルたちにはできないプレーを見せる必要がある。中3日で迎える13日のコートジボワール戦では、途中出場の久保がスタメンに入る可能性も高い。最高のアピールは、カメルーン戦で誰も奪えなかったゴール。自らドリブルで持ち込んで決めきるくらいのエゴを、冷静さと同時に持ち合わせていい。【岡崎悠利】