ロストフの悲劇の教訓は生かされなかった。オーストリア遠征中の日本代表(FIFAランク27位)はメキシコ(同11位)に完敗し、20年の最終戦を黒星で終えた。前半は攻め込むも、後半開始から選手交代でシステムを修正してきたメキシコに対応できないまま2失点を喫し敗れた。2年後のワールドカップ(W杯)カタール大会をイメージした強豪国との対戦も、18年W杯ロシア大会のベルギー戦で課された「臨機応変・対応力」の宿題は来年へ持ち越された。

後半途中からピッチに立ちこめた深い霧は暗示だったのか。日本代表はMF鎌田、柴崎、遠藤を起点に攻め込んだ前半とは一転、相手に主導権を奪われた。後半開始から中盤を1ボランチから2ボランチに変えたメキシコに、日本の起点は封印された。攻撃のリズムをそがれ、霧の中をさまよう。シュート数は前半5本に対し後半は1本。逆に同18、23分と短い間隔の連続失点を許して敗れた。

MF原口の脳裏には2年前の悪夢が浮かんでいた。逆転負けしたW杯ロシア大会決勝トーナメント1回戦のベルギー戦。2-0から後半わずか5分間で同点にされ、ロスタイムに逆転された。「まさにフラッシュバックした。実力ある相手と戦った後に、何で毎回こうなるんだという感情になった」と言葉を絞り出した。

森保監督は、悪夢のベルギー戦の反省もあり、3バックに着手するなど、攻守の戦術の幅を増やしてきた。だが、選手に求めた「臨機応変」「修正力」の課題は残されたまま。原口は「正直、またかという感じ。今日がW杯でなくてよかった。(残りの)2年間を無駄にせず、W杯にいってそこで同じ思いをしないようにしたい」と続けた。

メキシコは7大会連続でW杯16強に進出。2年後のW杯カタール大会へチームの立ち位置を知る貴重な機会だった。DF吉田は「同じベスト16でも、こんなに力の差があると自覚しないといけない」と完敗を認めた。0-2から4分間の3ゴールで逆転した韓国戦から中2日の相手は、疲れもみせず、個人技でゴールをこじ開けた。逆に日本はFW鈴木、原口と好機を仕留めきれずに終わった。パスの精度、修正力も含め相手が何枚も上だった。

森保監督は「世界で勝つためには、攻守のコンセプトをしっかりすること、強度が高い中でのプレーの質を高めること、決定力の部分で勝負強さを身につけないといけない」と反省を口にした。来年に持ち越された課題を克服し、後半に立ちこめたような濃霧を振り払うしかない。【岩田千代巳】