日本(FIFAランク27位)が韓国(同38位)に3-0と完勝した。代表デビューとなったDF山根視来(27=川崎フロンターレ)が前半17分、右足シュートで先制弾。韓国戦でのデビューで得点を挙げたのは、03年の永井雄一郎以来、6人目。年代別代表経験はなく、1歩ずつ階段を上ってきた男の初得点でチームは勢いに乗った。一方的な展開で、日韓戦では約10年ぶりの完封勝利。国内では1年4カ月ぶりの代表戦で、大きな収穫をえた日本は、30日にワールドカップ(W杯)カタール大会アジア2次予選でモンゴルと対戦する。

一発回答の先制弾だ。日本代表デビューとなった山根は前半17分、FW大迫からのヒールパスに即反応。ゴール前に抜け出すと、右足を振り抜く。先制ゴールを奪うと大きなガッツポーズ。「ああいうところで、点を取る面白さのためにサッカーをやっている。喜びが爆発しちゃいました」と笑顔を見せた。

中学(東京V・ジュニアユース)ではFWでプレー。ユースに昇格できず、茨城・ウィザス高に進学した。高校時代から12分間走は常に1位で、当時の大石篤人監督は、山根の前への破壊力と無尽蔵な運動量を見て、ボランチへコンバートした。全国大会は1歩届かなかったが、常に「相手がどういう場所にいるか」など、考えてプレーすることを身に付けた。

桐蔭横浜大では2列目の左が主戦場。湘南ベルマーレにはアタッカーとして加入したが、プロ1年目はけがの影響もありリーグ出場はなかった。2年目に、当時の曹貴裁監督が3バックの右にコンバート。曹監督から、1対1で負けない姿勢をたたきこまれ、FWで培ったドリブル、シュート力を生かし積極的に攻撃参加するスタイルで一気に花が開いた。

湘南時代から、日本代表への思いは胸に秘めてきた。20年に王者の川崎Fに加入し「このクラブで試合に出続けると、目に留まる回数が多くなっていく」。川崎Fでは4バックの右を任され、加入1年目から欠かせない存在となりベストイレブンに輝いた。

ポジションを渡り歩いてきたが、どこでも順応できたのは、高校時代から鍛えてきた「考える力」があったからこそ。この日もMF伊東らとの連係もスムーズで初招集とは思えないプレーぶりだった。「ホテルの部屋も1人の時間が多くていろいろ考えた。考えるのはいい準備。やるべきことを後悔なくやろうと」。守備でも吉田から「Jリーグの1・5倍の強さでいけ」と助言され、フィジカルの強さも発揮し「湘南時代にやっていたことは間違っていなかったと証明できた」と胸を張った。

決して日の当たる道を歩んできたわけではなかったが、27歳でたどり着いた代表でしっかりアピールした。酒井と室屋を含めた右サイドバックの競争に名乗り。「まだ1歩踏み出したばかり。自分にできることを1日1日、成長できるように頑張りたい」。地に足をつけ、カタールを目指していく。【岩田千代巳】