サッカー日本代表が、W杯アジア最終予選前半戦のヤマ場となる10月シリーズに挑む。7日の中国戦は1-0で勝利。初戦に敗れる不穏な船出から、最低限の勝ち点3のを手にした。疑問符のつく選手起用や交代、戦術など、課題は残したまま。10月は7日にサウジアラビア戦(ジッダ)、12日にはオーストラリア戦(埼玉)と、連勝発進した両国との2連戦を控える。W杯出場を大きく左右する10月へ、森保一監督(53)は「1戦1戦、生きるか死ぬか」の覚悟を示した。

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最悪の状況は免れた。勝ち点3にも、森保監督に笑顔はない。「私の職については、1戦1戦、生きるか死ぬかがかかっていると思っている」。毎試合、進退を懸ける覚悟があった。

決死の思いで臨んだ中国戦は、選手起用や交代、戦術のオプションに疑問符がついた。初戦を落とした中国を前掛かりで4バックと想定も、実際は5バックで守備固め。日本は直前に情報を入手し「急きょ準備した」というが、FWの枚数を増やすといった対応はなかった。得点が絶対条件の中、オマーン戦後にFWオナイウを追加招集したが、出番はなかった。セルティックで絶好調のMF古橋は、2試合とも本来の中央でなく左サイド。持ち味を生かせないまま、負傷交代と不安を残す終わり方をした。両サイドからの崩しははね返され続けるも、中央やエリア外からの攻撃オプションは見られなかった。

簡単に陣形を変えないのは森保監督の特徴だ。今夏の東京五輪でも、強豪スペイン相手にブロックを敷きつつシステムを変えずに対抗した。ピッチ上での立ち位置の変更など、工夫は選手の意思を尊重しつつ、今持っているものを貫いた。毎試合、成果と課題を整理し前進してきた。

今回の中国戦は、2日のホームでのオマーンとの初戦に敗れ、正念場だった。その中で初戦からスタメン変更は4人。戦術に関わる選手交代の5枠を使い切らず、屈辱を味わった選手の反骨心にかけた。「負けて気づかされることはたくさんある。いかに前向きに変換して次に臨めるか。その考えは変わらない」。指揮官は信条を口にした。

10月シリーズは連勝中の難敵との連戦が控える。サウジアラビアはオマーンに1-0で勝利。アウェー戦で10月でも最高気温が30度超の厳しい環境で戦うことになる。ホームで迎えるオーストラリアは2戦連続無失点の安定感を誇る。さらにタイトな日程で長距離移動も必要。MF南野ら複数選手の負傷離脱などもあり、どこまでコンディションを戻せるかも未知数だ。

指揮官は「選手の力や連係連動を100%発揮すれば、より高い確率で勝てる。オマーン戦のような、やろうとすることと実際のプレーのギャップが出ないよう、準備しないといけない」。W杯への岐路となる10月、チームと指揮官の真価が問われる。【岡崎悠利】

◆7日の中国戦VTR 前半自陣中央にブロックを固めた中国に対して、日本は一方的に攻め立てた。スペースのある両サイドから崩しを試みたが、中に密集する相手守備陣に跳ね返され続けた。このまま終わるかと思われた同40分、右サイドを突破したMF伊東のクロスから、FW大迫が“カンフーキック弾”で先制に成功。後半は中国が布陣を変えて同点弾を狙ってきたが、守備陣は集中を切らさず対応した。しかし日本も追加点を奪うことはできず、1-0と最後までどう転ぶか分からない展開の中、なんとか勝利を収めた。

 

◆サウジアラビア代表 ザンビアやコートジボワール、モロッコなどの代表チーム、ソショーやリールなどクラブ指揮官を歴任したフランス人のエルベ・ルナール監督(52)が率いる。W杯は5回出場。「砂漠のマラドーナ」ことFWサイード・オワイランを擁して16強に進出した94年米国大会がこれまでの最高成績。今最終予選のメンバーはアルヒラル、アルナスルの選手を中心に全員が国内組でチームワークは抜群。代表戦へ向けた準備も容易だ。ムワラド(アルイテハド)、ドーサリー(アルヒラル)両MFの得点力が武器。

◆オーストラリア代表 現役時代に広島でプレーし、仙台を指揮したこともあるグラハム・アーノルド監督(58)が率いる。W杯は5回出場。最高成績は06年ドイツ大会の16強。22年W杯カタール大会アンバサダーも務めるティム・ケーヒル氏の通算50点が代表最多得点記録。かつては同氏がエバートンでプレーするなど複数のプレミアリーガーを抱えていたが、現在はプレミアでプレーする選手は0人。岡山FWデュークやC大阪FWタガート、セルティックMFロギッチらが中心で、逆に日本代表を熟知しているとも言える。

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