<ワールドカップ(W杯)アジア最終予選:中国0-1日本>◇7日◇ドーハ

サッカー日本代表は、初戦のオマーン戦でクロスに泣き、今回はそのクロスで勝利をつかんだ。ただ、成功率は23・8%だった。日刊スポーツのサッカー担当記者が掘り下げる「Nikkan eye」は、世界で戦うための「Crosses」について考える。

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クロスに泣き、クロスで勝利をつかんだ。初戦のオマーン戦では、後半終了間際に、右サイドを突破され、クロスからニアで合わせられた。完璧な攻撃を前に日本は敗北を喫したが、今度はMF伊東-FW大迫で再現した。

ただ、以降は鳴りをひそめた。

アジアサッカー連盟(AFC)は、中国-日本の公式記録を掲載。それによると、中国の5本のクロスに対し、日本は約4倍の21本を記録した。これだけを見ると、圧倒しているかのように思う。現実は違った。次の項目には「クロス成功率」が記載されていた。日本は23・8%。4本に1本以下の確率だった。

成功したクロスは3本(ほかCKから2本)。あくまでこれは、味方につながった数。現実的にクロスから枠内のシュートにつながったのは、伊東-大迫の得点シーンの1回だけ。

左SBの長友が失敗したクロスは6本。チーム最多の数字だった。質が高いものとは言えなかった。後半14分。左サイドでフリーで受け、低い位置からアーリークロス。ニアを要求したFW大迫、真ん中にはMF原口、ファーへMF久保が走り込む中、ボールは直接ゴールキックとなった。大迫の首をかしげる姿が、印象的だった。

4度目の最終予選で、酸いも甘いも知るベテランだからこそ、「ここぞ」の質を求めたい。ベンチ入りした東京五輪で左SBを務めたDF中山、キック精度に定評がある東京DF小川は過去に代表招集された経験があるが、長友を超える存在には行き着いていない。若手の指針となるためにも、日本の得点シーンを増やすためにも、長友のピンポイントクロスは必要となる。

得点した場面、大迫の周りには中国の3人のDFがいた。それでも点と点でつながるクロスには、敵の人数は関係なかった。オマーンにやられたクロス、日本が証明したクロス。脅威となるピンポイントクロスの数が増えなければ、目標とするW杯ベスト8は狙えない。まして次はサウジアラビア、オーストラリアとの戦い。質の高い相手に、質の低いクロスでは通用しない。【栗田尚樹】