「おもしろくなってきたよ」。真夜中に届いた友人からの怒りのメールに、そう返信した。サウジアラビアに敗れた日本は最終予選3試合で勝ち点3。3連勝の2チームとは勝ち点で6の差がついた。「黄信号」「後がない」と言われているが、予選は始まったばかり。まだ7試合もある。

サウジアラビア戦は敗れたが、内容は決して悪くなかった。結果としてミスから失点したが、シュート数やボール保持率などスタッツを見てもほぼ互角。ミスからの失点は猛省すべきだし、森保監督の選手起用についても疑問はあるが、それほど悲観はしていない。

最終予選は計10試合。2位以内に入ることを考えれば、すべてに勝つ必要などない。アウェーで相手に勝ち点3を与えず、ホームで確実に3を奪う。中には1つ2つの黒星もある。出場を争う相手にアウェーで敗れることも想定内。問題は初戦ホームでオマーンに敗れたことだけ。挽回のチャンスは、まだまだある。

12日に勝てば、オーストラリアとの勝ち点差は3になる。次戦の11月11日に日本がベトナムに勝てば勝ち点は9。同日に行われるオーストラリアとサウジアラビアの直接対決の結果次第で、2位に浮上する可能性まである。少なくとも、2位以内は射程圏に入る。

オーストラリアも強いとは思うが、ホームのサポーターに力を借りれば怖い相手ではない。06年W杯ドイツ大会で衝撃的な逆転負け(1-3)を喫して以来、対戦は10回。敗れたのは唯一、10年W杯予選で、それも両者が出場を決めた後の試合だった。最近のチームからは、かつての圧倒的な個の力も感じられない。

「ドーハの悲劇」「ジョホールバルの歓喜」。90年代のW杯最終予選は、いつも心臓が締め付けられる思いだった。W杯は「特別な場所」だった。しかし、98年から6大会連続で、出場が当たり前になった。予選でも「ピンチ」と言われる場面はあったが、結果的には常に試合を残して出場を決めてきた。選手もサポーターも、W杯に慣れてしまった。「特別感」も希薄になっていた。

今回は、久しぶりにヒリヒリする刺激が味わえそうだ。怒られるかもしれないが、だから「おもしろくなってきた」。来年3月の最終戦、サウジアラビアとオーストラリアの対戦を横目にベトナムに勝ってW杯に滑り込む可能性もある。そういうギリギリの戦いが日本代表を、日本サッカー界を強くする。まずはオーストラリア戦。選手が、サポーターが、どれだけ強い思いで勝利を渇望できるか、それが結果として表れる。【荻島弘一】