<ワールドカップ(W杯)アジア最終予選:オマーン0-1日本>◇B組◇16日(日本時間17日)◇オマーン・マスカット

日本代表森保一監督(53)は負けられないアウェーでの2連戦で、しっかり勝ち点6を手にした。年内最終戦を白星で締め、ようやくひと息ついて年を越す。日刊スポーツのサッカー担当記者が掘り下げる「Nikkan eye」では、その森保監督の仕事ぶりについて考えた。

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極度のストレスの中でも、普段と同じ仕事がこなすことができる-。

森保監督が11月のアウェー2連戦を2連勝で終えた。6だった勝ち点は12になり、初めてW杯に自動的に出場できるB組2位に浮上した。チームに同行したスタッフによると、森保監督は普段と変わらない振る舞いだったという。練習前後に選手に声を掛け、怒ることもなく、たんたんとルーティンをこなしたようだ。

2試合中、1試合でも引き分けたら解任される可能性が高かったことを、森保監督は知っていた。5日の日本協会の技術委員会で、反町委員長は各委員に「今後、急な変化があることもあるので、代表監督人事については一任してほしい」と申し出て、了承を得ていた。そのことは指揮官の耳にも入っていた。

つまり反町委員長は、ベトナムとオマーンのアウェー2連戦で勝ち点を落とした場合、技術委員会を通さずとも、森保監督を解任できるような手はずを整えた。サポーターからの厚い支持も得られず、後任候補として長谷川健太氏の名が浮上。森保監督は崖っぷちに追い込まれていた。

長年、日本代表にかかわっている、ある関係者の話。「最終予選になると、結果によって内部で、それぞれの呼称が変わってくる。“我々”や“俺たち”だったのに、負け始めると“お前ら”になって、最後は“あいつら”になってしまう」。今回も田嶋会長らは、指揮官とチームに、揺るぎない信頼を寄せていた。だが、内部で森保体制に冷たい視線を向けて注文を付け、足を引っ張ったようにもうつる幹部がいたのは事実だ。

最終予選は序盤の4戦を2勝2敗。スタートダッシュに失敗したのはもちろん森保監督の責任だが、自ら招いた危機とはいえ、少しの失敗でも職を失うという危機的な状況を脱出した。その精神力は、評価に値する。自分のクビもかかった11月の2試合。その中で森保監督が悩んだのは、三笘をチームにどう絡ませるかだった。

三笘は人見知りする性格で、なかなかA代表になじめなかった。とにかく無口で、声を掛けても返事は「はい」か「いいえ」か「大丈夫です」などと短すぎる。兼任でもあった森保監督が、東京五輪で三笘の性格を事前に把握していたことは大きかった。根気よく会話を続け、チャンスを与え、個人もチームも結果を残した。解任危機を乗り越えた指揮官が、三笘という新しいコマを得て「生還」した。7大会連続のW杯へ、大きな財産となりそうだ。【サッカー担当キャップ=盧載鎭】