22年ワールドカップ(W杯)カタール大会で日本代表が使用するベースキャンプ地に、日刊スポーツ記者が日本のメディアで初潜入。トレーニング場所はドーハ市内にあるカタール1部アルサドの練習場で、ホテルは4つ星の「ラディソン・ブルー・ホテル」。いずれも快適な施設だが、豪華絢爛(けんらん)でもなければ、他国のベースキャンプ地にはない特別な何かがあるわけでもない。今回は地に足をつけて“普段どおり”というのがテーマのようだ。

2015年に建設されたというアルサドの練習場。日本代表が練習で使用するピッチは2面だ。トレーニング室、メディカル室、ホット&コールドバスなど必要なものは一通り備えている。ビリヤードや卓球台などを置いた娯楽室もある。ただ、目玉になるような最新鋭機器が置いてあるかと言われればそうではない。トレーニングマシン類は、ごくごく一般的なもの。印象に残るのはメディカル室の壁に描かれた漫画「進撃の巨人」のようなイラストくらいだ。

そもそも日本同様、アルサドの施設を使用するフランスは、練習ピッチ2面に加えてアルサドの本拠地ジャシム・ビン・ハマド・スタジアムも使う予定。設備だけで比較すればフランスの方が上だ。02年W杯日韓大会では周囲から遮断された葛城北の丸(静岡・袋井市)をベースキャンプ地に選択し、10年南ア大会、14年ブラジル大会では豪華リゾートを選んだ日本としては、今大会はいささか地味な印象だ。

W杯組織委メンバーはベースキャンプ地の選定について「各国サッカー協会の希望によるもの。我々がチームごとに差をつけて決めたりしているわけではない。例えばドイツはプライベートの時間を静かにすごすためにベースキャンプ地を北部にした。各国の求めるものによって場所や施設は変わってくる」と説明した。

日本がカタール大会のベースキャンプ地に求めるものとは何だろうか。森保監督は以前「ホテルと練習場の移動に負荷がかからないこと」と希望を述べていたが、願いはかなったといえる。

日本の宿泊ホテルはドーハの中心部に近い4つ星の「ラディソン・ブルー・ホテル」。例えばカタールやイングランドが宿泊する5つ星のホテルに比べれば豪華さでやや劣る。それでもホテルと練習場が車で約10分と近く、さらに練習場から1次リーグ2試合を行うハリファ国際競技場までは10分弱。コスタリカと戦うアハマド・ビン・アリ・スタジアムにも15分程度だ。

利便性が良ければ余計なことに神経を使わず、より普段どおりの精神状態で試合に臨める。また豪華すぎるホテルに宿泊し「W杯で戦っているんだ」とあらためて意識しすぎることもない。ホテルではフロアを貸し切り、キッチンも独自に使えるという。「普段どおり」の力を発揮できる要素は整っている。【千葉修宏】

■過去のベースキャンプ地

◆98年フランス大会 市街地から離れ、人の出入りが少ないフランスの国際的リゾート地エクスレバンのホテルを貸し切って使用。

◆02年日韓大会 周囲を遮断できる立地条件を最優先にしてホテル葛城北の丸(静岡・袋井市)を選択。練習は完全非公開で、露天風呂でくつろげる環境。1次リーグ3会場の中央に位置。

◆06年ドイツ大会 人口約30万人のボン。ジーコ・ジャパンが合宿に利用していた千葉・成田の雰囲気に近く、1次リーグ3会場にバス移動が可能。プール、ジム施設が整っており、日本人シェフ帯同が可能だった。

◆10年南アフリカ大会 南部のジョージの5つ星ゴルフリゾート「ファンコートホテル&カントリークラブ・エステート」。東京ドーム130個分(613ヘクタール)の敷地に専用ミーティングルームなどが用意され、空港へ車で5分。

◆14年ブラジル大会 サンパウロ北西部のイトゥのスパリゾート。2つの国際規格のサッカーグラウンド、ジム、サウナ、室内、屋外のプール、マッサージルームあり。

◆18年ロシア大会 カザンにあるルビンのクラブハウスをメインに使用。

■他国のベースキャンプ地

◆アルゼンチン、スペイン=カタール大学のグラウンドと宿泊施設。ショッピングや食事ができるカタールでも有数の高級観光スポット「ザ・パール」に行きやすい。2カ国がほぼ同宿。

◆オーストラリア=ドーハ市内のアスパイア・アカデミーの宿泊施設およびグラウンド。元豪代表のレジェンド、ティム・ケーヒルがカタールのスポーツ選手育成機関である同アカデミーのトップを務めているため。

◆サウジアラビア=サウジアラビアの国境に近いシーラインビーチのホテル&練習場。

◆ドイツ=カタール最北のズラル・ウェルネスリゾート。プライバシーを重視するため。ドーハ中心部まで車で1時間超。

◆イングランド=スーク・アルワクラ・ホテル・カタール・バイ・チボリ。5つ星の高級ホテル。