昨季限りで現役引退した日本サッカー界のレジェンド、中村俊輔氏(44)が日本代表と横浜FCのコーチを兼務する方向で交渉していることが12日、分かった。

日本サッカー協会(JFA)から日本代表のコーチ就任のオファーを受けた中村氏は、横浜FCのコーチに就任したばかりとあって兼務できる方法をJFAに相談。JFAは森保一監督とも話し合い、「ロールモデルコーチ」として日本代表の活動期間に参加する方向で調整は進んでいる。

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中村氏は日本代表へポイント参戦することになりそうだ。日本代表のコーチ就任へ白羽の矢を立てたJFAが、同氏の要望を受け入れる方向で意向を固めた。普段は横浜FCのコーチとして働き、代表活動中は代表のコーチとしてポイント参戦する「兼務」を認める方針で意思を固めた。

JFA同様、中村氏も日本代表コーチ就任に前向きだった。ただしネックになったのが、昨季限りで横浜FCで現役を引退し、コーチに就任したばかりだったこと。義理堅い中村氏の悩みを、JFAがくむことで問題は解決されそうだ。

JFA幹部は「A代表(日本代表)の攻撃のコーディネートとセットプレーのバリエーションを増やすため、俊輔の力が必要だということは意見が一致している。ただコーチ就任にはクリアする部分があって、そこは(日本)協会が理解できる部分でもあったので、大きな障害にはならなかった」と話した。

中村氏が兼務を希望する裏には、他にも大きな理由がある。現在、指導者のB級ライセンスまで取得しており、Jクラブの監督になるためのS級ライセンス取得には最短で3年かかる。日本代表のコーチ業に専念するとなれば、26年W杯まではライセンス取得が難しい。しかし兼務になると、代表活動期間だけA代表に専念できるため、コーチングライセンスも並行して取得が可能になる。

加えて利点もある。横浜FCはJ1所属のため、代表スタッフが視察で見落としがちな国内組の隠れた逸材を見つけられる確率も高くなる。普段から相手を研究し、実際対戦するため、長所も短所も細部まで把握できる。普段からJリーグを自然に視察する環境にあることは強みだ。

兼務でA代表コーチになり、最初は国内合宿やAマッチ時だけ代表に合流するなど、制限された活動になる可能性が高い。ただしW杯アジア最終予選やW杯本大会、アジア杯など大事な大会や試合になると、その期間は代表に専念するなど柔軟に対応していく。現在、両者は兼務へ前向きな交渉を続けており、2月中にはA代表のコーチ就任が正式に決まる可能性が極めて高くなった。

◆ロールモデルコーチ 20年9月に元日本代表DF内田篤人氏が、新設第1号として就任。世界で積み重ねてきた豊富な経験を日本サッカーの育成と強化に生かしてもらうことが目的。内田氏はアンダーカテゴリーの日本代表合宿などに参加し、自身の経験に基づき未来の日本代表入りを目指す選手たちを指導している。その後に同じく代表で活躍した中村憲剛氏、阿部勇樹氏も就任し、活動している。