U-20アジア杯(ウズベキスタン、1~18日)に出場するU-20日本代表DF諏訪間幸成(19=筑波大)は、全日本プロレスの「暴走専務」諏訪魔(46)を父に持つ。

フィールドは違えど父のように。どんな敵にも強気に戦いを挑む19歳に意気込みを聞いた。3日に中国との初戦を迎える愛息へのエールを聞こうと“悪役レスラー”にもインタビューを打診。ところが…。当日、会場に現れたのは、笑顔がすてきな諏訪間幸平専務。父は息子へ「五輪」の夢を見ている。【取材・構成=栗田尚樹、磯綾乃】

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遺伝子はしっかりと受け継がれている。「球際だったり、戦いというところは、全然嫌いじゃないです」。諏訪間はよどみなく言い切った。

父譲りのがたいの良さは、U-20日本代表の中でも目を引く。183センチ、76キロの屈強な体。対人プレーが自他ともに認める武器だ。「レスリングも相手にタックルしたり、フィジカルコンタクトは小さい頃からやっていた。だから、コンタクトプレーを楽しめてやれているのかなと思います」。レスリングをしていたのは4歳から7歳まで。「多分、イヤイヤやらされていた(笑い)」と振り返るが、今も違うフィールドで生かされている。

7歳だった10年、W杯南アフリカ大会を見てサッカーにあこがれた。「やりたいことをやれよ」。父は自分と違う道を歩む息子の背中を押してくれた。「試合が終わるまで戦い続けろ」。今も大切にしている父の言葉だ。幼い頃は試合で負けていると、終了の笛が鳴る前に泣き出していた。「顔を上げろ!」。ピッチの外で見ていた父は闘志を植え付けるように、ずっと叫び続けてくれた。

リングで戦う姿を見に行ったのは、高校3年生の時が最後。闘志をむき出しに戦う格好良さは、鮮やかに心に残っている。「迫力があるし、1つの技で(観客を)沸かせられて。自分もプレーで沸かせられるような選手になりたい」。進んだ道は違っても、大きな背中は今も目標。「尊敬しています」。そう言い切れる偉大な父のように、1つのプレーで沸かせられる選手を目指す。

横浜ジュニアユースからユースに進み、キャプテンも務めた。さらなる進化の場を求め、日本代表MF三笘薫やDF谷口彰悟を輩出した筑波大に昨年進学。1年生からレギュラーとして活躍する。「対人やヘディングの高さを、大学に行って『それが自分の武器なんだ』と、しっかり自覚することが出来た。認識出来ているから、いい形で来られているのかなと思います」。大学では筋トレにも注力。おもりの重さではなく動きの速さを重視し、サッカーに生きる筋肉をつけた。頼もしい体はさらに厚みを増している。

26日に行われたFCパフタコールU-21とのトレーニングマッチでは、1-1の後半13分に得意のヘディングでゴールをマーク。戦いへのボルテージは上がっている。アジアの頂点だけでなく、U-20W杯の出場権もかけた今大会。ウズベキスタンへ出発する前、父からは「とにかく頑張って来いよ。W杯の出場権絶対取って来いよ」とゲキをもらった。最後の試合が終わるまで、父のようなファイティングスピリッツで戦い続けるつもりだ。

◆諏訪間幸成(すわま・こうせい)2003年(平15)6月6日生まれ、神奈川県出身。横浜ジュニアユースから横浜ユースに進み、昨年から筑波大サッカー部に所属。開幕戦でデビューしフル出場を果たした。U-15、16、17と各年代の日本代表に選出。昨年11月にスペイン遠征を行ったU-19日本代表にも選ばれた。183センチ、76キロ。

◆諏訪魔(すわま)本名・諏訪間幸平。1976年(昭51)11月23日、神奈川県藤沢市生まれ。レスリングの03年全日本選抜フリー120キロ級を制し、世界選手権代表。04年全日本入団。同年10月馳浩戦でデビュー。06年にヒールターンし、リングネームを諏訪魔に改名。21年3月から同団体の専務執行役員。主なタイトルは三冠ヘビー、世界タッグ。188センチ、120キロ。

 

◆U-20アジア杯 2年おきに行われてきたが、20年はコロナ禍により中止。今大会からU-20W杯と同年開催となり、上位4カ国に今年5月にインドネシアで開幕するW杯の出場権が与えられる。インドネシアが4強に入った場合は、準々決勝敗退チームでプレーオフを実施予定。日本は16年以来2度目の優勝を目指す。1次リーグD組で中国、キルギス、サウジアラビアと対戦。2位までに入れば準々決勝に進み、4強入りでW杯行きが決まる。キャプテンはMF松木。